ホタテ由来プラズマローゲンがスポーツ選手の集中力を高める
脂質(リン脂質)の一種であるプラズマローゲンは、 体内では抗酸化作用やイオン輸送、 コレステロール排出、 膜融合など生命にとって重要な役割を果たしています。
心臓や骨格筋など、 酸素をたくさん消費する部位に多く存在し、 特に脳に多いのが特徴です。 ストレス社会(情報過多)の現代は、
脳で処理する情報量は非常に多くなっており、 私たちの脳は、 酸化されやすい状況にさらされています。 そして、
酸化ダメージから脳を守るプラズマローゲンの減少と「脳疲労」とは深い関りがある事が分かってきました。
<発表のポイント>
・プラズマローゲンを投与した群は、 プラズマローゲンを投与しなかった偽薬(プラセボ)群より睡眠が有意に
改善しました。
・プラズマローゲンを投与した群は、 偽薬(プラセボ)群より、 気分スケールの「怒り・敵意」、 「疲労・無気
力」のネガティブな気分が高い人ほど顕著に改善しました。
・集中力評価では、 プラズマローゲンを投与した群の集中力が亢進しました。
・プラズマローゲンは「脳疲労」の症状である不眠やネガティブ気分を解消し、 運動選手など集中力を必要とす
る人にとって、 日常的に摂取することで脳機能が活性化できる可能性を示しました。
概 要
医療法人社団ブックスBOOCSクリニック福岡(福岡県福岡市博多区、 藤野稔院長、 若菜智香子)、 九州産業大学 人間科学部
スポーツ健康科学科(福岡県福岡市東区、 大柿哲朗教授、 磯貝浩久教授、 福田潤准教授)、 レオロジー機能食品研究所(福岡県糟屋郡、 藤野武彦代表、
馬渡志郎所長)、 九州大学 医学研究院 基礎医学部門 生体情報科学講座・統合生理分野(福岡県福岡市東区、 高木厚司助教)の研究グループは、
運動選手(18~22歳)にホタテ由来プラズマローゲン2mg/日を投与したプラズマローゲン群は偽薬(プラセボ)群に比べ、 睡眠と気分スケールの「怒り・敵意」、
「疲労・無気力」を改善し、 集中力を高めることを明らかにしました。
学業や仕事やスポーツなどのあらゆる場面で集中力は重要な要素となっており、 集中力の有無が成否を左右するという事が多々見られます。 そして、 最近、
非常に多くなっているうつ病などの心の病気の症状として集中力が低下しやすいことがあげられます。
本研究では、 ホタテ由来プラズマローゲンの継続的な摂取によって、 睡眠やネガティブ気分の「脳疲労」症状を改善し、 集中力を高めました。 この結果は、
集中力を必要とするすべての人に有用であると考えられます。
これらの研究成果はインパクトファクター6.68と高い科学ジャーナルFrontiers 139誌の最高峰、 Frontiers in Cell and
Developmental Biologyに掲載されました。
Frontiers in Cell and Developmental Biologyは、 科学や技術、 医学等の分野の研究成果を取り扱う、 Nature
Research社から出資を受けるハイレベルな査読付きオープンアクセス科学ジャーナルです。
1. 睡眠アンケートの結果
図1 アテネ不眠尺度
・アテネ不眠尺度とは、 世界保健機関(WHO)が中心になって設立した、 「睡眠と健康に関する世界プロジェク
ト」が作成した世界共通の不眠症の判定方法です。
・プラズマローゲン群は投与2週間後及び4週間後共に有意に睡眠が改善しました。 偽薬(プラセボ)群は有意な
改善は見られませんでした。
2. 気分スケール(POMS2)の結果
図2 「怒り・敵意」および「疲労・無気力」の初期値スコアと4週間後スコア変化量との相関図
・POMS2は世界的に信頼されている心理検査で、 気分の状態を見ることができます。
・今回、 「怒り・敵意」「疲労・無気力」に統計的に有意な改善が見られ、 その値が高度な場合ほど顕著な改善が
見られました。
3. 集中力評価の結果
図3 内田クレペリン検査による1分毎の計算量の改善点数の比較
・内田クレペリン検査は、 心理検査のなかでも「作業検査法」と呼ばれる検査で、 制限時間内に単純な足し算の
作業を繰り返し、 処理能力や性格的特徴をチェックする検査です。
・4週後の1分毎の改善点数は、 2分目を除き全てプラズマローゲン群が上昇しました。
●今後の展望
今回、 ホタテ由来プラズマローゲンを摂取することによってネガティブな気分が強い人ほど顕著な改善が見られました。
現在うつ病などを含む気分障害患者は年々増加しており、 さらに、 コロナ禍で拍車がかかり、 さらに深刻化しています。 現在、
一般社団法人プラズマローゲン研究会と国立精神神経医療センターとの共同研究で「うつ気分」症状のある方を対象とした無作為化プラセボ対照比較試験を進めています。
今後も脳疲労とプラズマローゲンに関する研究を進めていきたいと思います。
●論文情報
論 文 名:Orally Administered Plasmalogens Alleviate Negative Mood States and
Enhance Mental
Concentration: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
掲 載 紙:Frontiers in Cell and Developmental Biology
著 者:Minoru Fujino, Jun Fukuda, Hirohisa Isogai, Tetsuro Ogaki, Shiro Mawatari,
Atsushi
Takaki, Chikako Wakana and Takehiko Fujino
U R L :
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2022.894734/full
●参考文献
1 Fujino T, Hossain S and Mawatari S. Therapeutic efficacy of plasmalogens for
Alzheimer’s disease,
Mild Cognitive Impairment and Parkinson’s disease in conjunction with a new
hypothesis
for the etiology of Alzheimer’s disease. In: Lizard G (ed). 2020. Peroxisome
Biology: Experimental
Models, Peroxisomal Disorders and Neurological Diseases. Switzerland: Springer
International
Publishing, pp.195-212.
2 Fujino T et al. 2018. Effects of Plasmalogen on Patients with Mild Cognitive
Impairment:
A Randomized, Placebo-Controlled Trial in Japan. J Alzheimers Dis Parkinsonism
8:419.
3 Fujino T et al. 2017. Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral
Administration of Plasmalogen
in Patients with Mild Alzheimer’s Disease and Mild Cognitive Impairment: A
Multicenter, Randomized,
Double-blind, Placebo-controlled Trial. EBioMedicine 17:199–205.
4 Fujino T et al. 2019. Effects of Plasmalogen on Patients with
Moderate-to-Severe Alzheimer’s
Disease and Blood Plasmalogen Changes: A Multi-Center, Open-Label Study. J
Alzheimers Dis
Parkinsonism 9:474.
5 Hossain S, Mawatari S and Fujino T. Biological Functions of Plasmalogens. In:
Lizard G (ed). 2020.
Peroxisome Biology: Experimental Models, Peroxisomal Disorders and Neurological
Diseases.
Switzerland: Springer International Publishing, pp. 171-193.
●参考情報
・医療法人社団ブックスBOOCSクリニック福岡
https://www.boocsclinic.com/fukuoka/
・九州産業大学 人間科学部 スポーツ健康科学科
https://www.kyusan-u.ac.jp/faculty/human_sciences/sports/
・レオロジー機能食品研究所
https://www.reoken.com/research/
・九州大学 医学研究院 基礎医学部門 生体情報科学講座・統合生理分野
https://www.med.kyushu-u.ac.jp/research/research_groups/
・一般社団法人プラズマローゲン研究会
●本件お問い合わせ先
一般社団法人プラズマローゲン研究会
〒812-8582 福岡市東区馬出三丁目1番1号
九州大学大学院医学研究院加齢病態修復学講座
(事務局)
TEL:092-273-2411
FAX:092-273-2421
メールアドレス:[email protected]
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