サムスングループ元会長・李健煕の言葉を読み解く

世界的電子製品メーカーはいかにして成長を遂げたのかーーデジタル時代をリードするビジネス哲学とは

昨年10月に逝去した韓国最大の財閥企業サムスングループの二代目会長、 故・李健煕氏は、 1987年に創業者である父の逝去を受け、

サムスン(当初は三星)グループ会長に就任。 グループ主要会社のサムスン電子を、

半導体やスマートフォンのジャンルで世界的なシェアを誇るグローバル企業に成長させた人物です。

多くの日本人が知らないことですが、 衰退著しい日本の電機メーカーとは対照的に、 サムスンは2000年代以降著しく成長を遂げ、

いまやパナソニックとソニーの売り上げを足してもサムスンに及ばないのが実情です。 韓国の一企業に過ぎなかったサムスンが、 なぜ、

ここまでグローバルな成長を遂げたのか。 韓国で刊行され、 この度日本語版が出版された書籍『サムスングループ 李健煕の言葉』から、

その革新的な経営戦略やビジネス哲学を読み解くことができます。 同書からいくつか李健煕氏の言葉を紹介しましょう。

「デザインが勝負を決める」(1993年)

「国民全員が無線端末を持つ時代が訪れる」(1995年)

「二十一世紀は知的資産が企業価値を決める」(1996年)

李健煕は1990年代に、 21世紀がデジタル時代になることを確信し、 携帯電話やスマートフォンの開発に力を注ぎました。

当時から「デザインのようなソフトウェア的な創造力が、 企業の大切な資産であり、 21世紀の企業経営の決定的な武器になる」と、 物を売るだけではなく、

デザインの重要性についても説いていました。 そして現在、 サムスンのスマートフォン「Galaxy(ギャラクシー)」シリーズは世界シェア第1位を誇り、

アップルの「iPhone」のシェアを抜いています。

「半導体事業は我が民族の才能と特性にぴったりの業種だ」(1997年)

この発言から20年余り過ぎた現在、 サムスン電子の半導体の売り上げシェアはインテルに次ぐ世界第2位を誇っています。 1997年当時、

「箸文化圏のため手先が器用であり、 靴を脱いで生活するなど、 住生活において清潔さをきわめて重視する。 このような文化が半導体生産にとても適している」と語り、

様々なチャレンジを惜しまなかった結果が、 現在の成功につながっているのです。

「働く場所は会社だけではない」(1993年)

「タイムカードなんて押さなくていい。 タイムカードなんてなくしてしまえ。 家でもど、 どこでも、 考えさえすればいい」と、 1993年の時点で語っていた李健煕。

まさに今のテレワーク、 ワーケーションを予言しているかのようです。

「過去の成功は忘れなさい」(2013年)

「時代遅れのものは、 ためらうことなく捨てろ」(2014年)

21世紀に入り、 グループが韓国一の巨大財閥に成長を遂げても、 李健煕は「挑戦して、 新たな成長の道を切り開く、

未来を担う新事業を見出さなければならない」「変化の主導権を握るために、 市場と技術の限界を突破しよう」と語り続けます。 そして「自由に想像し、 思う存分、

挑戦しよう」と、 次世代へメッセージを託しました。

書籍『サムスングループ 李健煕の言葉』は、 李健煕の発言、 語録をまとめた書籍『李健煕の言葉(原題)』(韓国、 スターブックス社刊)を、

日本語版として翻訳編集したものです。

●書誌情報

書名 『サムスングループ 李健煕の言葉』

著者 [編著]ミン・ユンギ [訳]チョン・ウンスク

体裁 四六判・224p

定価 1650円(税込)

発売 2021年4月 23日(金)

発行 双葉社

https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31615-5.html?c=30597&o=&