軽度認知障害(MCI)の疑いがある方において、ビフィズス菌MCC1274(Bifidobacterium breve MCC1274) 摂取による認知機能改善作用と血中HbA1cが相関することを確認

摂取による認知機能改善作用と血中HbA1cが相関することを確認 ~科学雑誌『Journal of Alzheimer’s Disease』掲載~ 森永乳業は、

認知機能改善作用が確認されている当社独自保有のビフィズス菌であるBifidobacterium breve MCC1274(以下B. breve

MCC1274)について、 軽度認知障害※1が疑われる方80名を対象としたプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験を実施し、

総合的な認知機能が顕著に改善したことを2020年7月にご報告いたしました。 その後の追加解析により、 血中HbA1c(ヘモグロビン エー ワン

シー)※2と認知機能改善作用に相関関係があることを確認しましたので、 ご報告いたします。

なお本研究成果は、 科学雑誌「Journal of Alzheimer’s Disease」※3に2021年4月15日に掲載されました。

<研究背景と目的>

近年、 腸内細菌が健康と密接に連関していることが明らかになっており、 腸内細菌を含めた腸と脳が機能連関することを意味する“脳腸相関”が注目されています。

森永乳業では、 50年以上にわたりビフィズス菌の研究を行っており、 “脳腸相関”にも注目し、 ビフィズス菌摂取による認知機能改善を目指しています。

これまで当社では、 B. breve

MCC1274において軽度認知障害が疑われる方や物忘れが気になる方に対する認知機能改善作用の可能性について報告を行ってまいりました※4。

特に2020年7月にご報告した、 軽度認知障害が疑われる方を対象とした臨床試験では、 B. breve

MCC1274摂取による顕著な認知機能改善作用が確認されました。

このたびB. breve MCC1274の作用機序を検討するため、 臨床試験における認知機能改善作用と血中パラメーターとの関連性を検討いたしました。

PDF版はこちら

https://prtimes.jp/a/?f=d21580-20210427-9028.pdf

<研究内容>

研究方法

●対象者 :軽度認知障害の疑いがある50歳以上80歳未満の男女80名

●試験デザイン :プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験

●試験食品摂取:対象者をランダムに2群に分け、 B. breve MCC1274を100億個含むカプセルまたは、 ビフィ

ズス菌を含まないプラセボカプセルを1日2個、 16週間摂取

●評価 :摂取前と16週間摂取後に、 神経心理検査の一種である『アーバンス神経心理テスト

(RBANS)』※5(主要評価項目)を用いて認知機能を評価しました。 また安全性を評価するため、 摂取前後に血液を採取し、

生化学的・血液学的検査を実施しました。

研究結果

●生化学的・血液学的検査では、 B. breve MCC1274摂取による変動(群間有意差)は認められなかったため、 ビフィズス菌の安全性が再確認されました。

●B. breve MCC1274摂取による生化学的・血液学的検査値の変動と、 RBANS評価点合計の変動の相関関係を解析したところ、

血中HbA1cの変動とRBANS評価点合計の変動との間に負の相関が確認されました。 一方でプラセボ群では、

血中HbA1cの変動とRBANS評価点合計の変動との間に相関は認められませんでした(図1)。

●摂取前における血中HbA1c(4.5~6.0%)の中央値で2群に分けた層別解析を実施したところ、 元々血中HbA1cの値が高かったグループにおいて、 B.

breve MCC1274の認知機能改善作用がより顕著であることが確認されました(図2)。

●HbA1cは、 血糖値や全身の炎症状態を反映する血中パラメーターであることから、 B. breve

MCC1274の抗炎症作用がヒト臨床試験において示唆されました。

図1. RBANS評価点合計の変動値とHbA1cの変動値の相関関係(Pearsonの相関係数)

図2.B. breve MCC1274摂取による認知機能改善作用

(HbA1cの中央値(5.4%)で2群に分けた際のRBANS評価点合計の変動値)

■:B. breve MCC1274摂取群、 □:プラセボ摂取群

* P<0.05, ** P<0.01, *** P<0.001プラセボ群と比較して有意差があることを示す、 Student’s t-test

今後もHbA1cをはじめとする糖代謝・炎症に関連する血中パラメーターに着目して、 ビフィズス菌MCC1274

(B. breve MCC1274)の機能性・作用機序を解明することで、 健康寿命の延伸に繋がる素材開発に取り組み、

食を通じた社会貢献の実現に邁進してまいります。

以上

※1 軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)

認知症の前段階である軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)は、 現在国内では約400万人、

世界的には国によって65歳以上の人口の7~42%がMCI状態であると推計されています(Petersen ら、 J Intern Med 275,214-228、

2014)。 MCIの方には、 認知機能の低下が起きており、 年間10~30%の方が認知症に移行するとされていますが(2019年6月 厚生労働省

認知症施策の総合的な推進について)、 MCIは可逆的な状態であるため、 認知機能が正常な状態へと回復する可能性があります。 そのため、

MCIと診断された場合であっても、 認知機能の改善又は維持ができれば認知症への移行を遅らせたり、 予防できる可能性があります。 現在、

MCIや認知症に対する有効な治療法がない中、 発症予防に注目が集まっており、 特に、 生活習慣の改善など日常生活の中で実践できる有効な対策が求められています。

※2 HbA1c(ヘモグロビンA1c)

赤血球内のたんぱく質の一種であるヘモグロビンと血中のブドウ糖が結合した糖化産物の総称です。

直近1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する血中パラメーターであると同時に、 アルツハイマー病などの炎症性神経変性疾患との関連性が報告されています。

アルツハイマー病は「3型糖尿病」とも言われており、 糖尿病患者の認知症の発症リスクは、 健常者に比べて2~4倍も高いと言われていることから、

血糖値を適切にコントロールすることが重要であると考えられています。

※3 論文タイトル

Association of plasma hemoglobin A1c with improvement of cognitive functions by

Probiotic Bifidobacterium breve supplementation in healthy adults with mild

cognitive impairment.

※4 B. breve MCC1274を用いた主な既往研究について

1.プレ臨床試験にて、 B. breve MCC1274が認知機能改善作用を示すことを、 2017 年 10 月18日に科学雑誌「Scientific

Reports」に報告しました(タイトル:Therapeutic potential of Bifidobacterium breve strain A1

for preventing cognitive impairment in Alzheimer’s disease)。

2.軽度認知障害が疑われる方における認知機能改善作用を、 2018年3月31日に科学雑誌「The Journal of Prevention of

Alzheimer’s Disease」に報告しました(タイトル:Bifidobacterium breve A1 supplementation

improved cognitive decline in older adults with mild cognitive impairment: An

open label, single-arm study)。

3.物忘れが気になる方における認知機能改善作用を、 2019年5月28日に科学雑誌「Beneficial

Microbes」に報告しました(タイトル:Effects of Bifidobacterium breve A1 on the cognitive

function of older adults with memory complaints: a randomised, double-blind,

placebo-controlled trial)。

4.軽度認知障害が疑われる方における認知機能改善作用を、 2020年7月3日に科学雑誌「Journal of Alzheimer’s

Disease」に報告しました(タイトル:Probiotic Bifidobacterium breve in improving cognitive

functions of older adults with suspected mild cognitive impairment: a

randomized, double-blind, placebo-controlled trial)。

※5 アーバンス神経心理テスト(RBANS)

1998年に米国のRandolphが開発し、 標準化された神経心理学検査の一つです。 健常者~中程度の認知症患者を対象に、

繰り返し認知機能を評価する事が可能という特徴があります。 即時記憶、 視空間・構成、 言語、 注意、 遅延記憶の5つの領域ごとに認知機能を評価できるとともに、

これら5つの領域の結果から総合的な認知機能も評価することが可能です。

●即時記憶:情報を即時に記憶する能力の事を指します。 単語や物語などを提示されて、 即時に復唱できるかを調べることで評価します。

●視空間・構成:空間的関係を認識し、 正確に構成する能力の事を指します。 複雑な幾何学図形を提示されて模写できるかなどを調べることで評価します。

●言語:言葉の意味など言語的な認知能力の事を指します。 イラストを見て名称を答えられるかなどを調べることで評価します。

●注意:視覚的・聴覚的な情報を短期的に記憶し、 操作する能力の事を指します。 数字や符号を見て、 復唱、 認識できるかを調べることで評価します。

●遅延記憶:数分~数日の間に生じた事を記憶する能力の事を指します。 即時記憶を調べる際に使用した単語や物語を、

少し時間を置いたのちに再生できるかを調べることで評価します。