コロナ禍で連続減益ながら前号比で業績見通し改善 製造業は底入れ好転、情報・通信業が一段上振れ

製造業は底入れ好転、情報・通信業が一段上振れ 最新決算を踏まえて四季報が全社の業績を独自に予想

3月期決算会社の2021年3月期第2四半期(7~9月期)決算が出そろいました。 新型コロナウイルスの業績に与える影響が見えてきたことから、

会社からは業績見通しの修正発表が相次ぎました。 株式会社東洋経済新報社(本社:東京都中央区、 代表取締役社長:駒橋憲一)では、

業界担当記者が決算発表を受けて取材を行い、 全上場会社について独自に今期、 来期の業績予想を見直しました。

四季報予想を集計した結果、 今期(20年 10 月期~21 年9月期、 対象 3419 社)の予想営業利益は、 製造業が前期比14.7%減、

非製造業は同15.3%減と、 ともに減益となりました。 全産業では、 14.5%減と前期の24.0%減に続いて大幅減益が予想されています。

銀行業、 保険業を除く 31 業種の中で、 今期予想が営業増益となるのは情報・通信業、 医薬品、 証券業、 その他製品の4業種のみ。

石油・石炭製品は黒字転換です。 残る 26 業種のうち 22 業種は減益予想で、 4業種が赤字です。 陸運業、 海運業、 空運業が赤字転落となり、

鉄鋼は連続赤字の見通しです。

ただ20年9月に発刊した四季報秋号と比較すると、 上場企業の業績見通しは改善しました。 海外需要の回復を受けて、 赤字見通しだった輸送用機器が黒字転換。

その代表格であるトヨタ自動車は、 業績見通しを大幅上方修正。 上期の落ち込みが響くものの、

後半の追い上げにより販売台数は前期比10%減にとどまる見通しを示しました。 また電気機器も減益幅を縮めるなど、 製造業では、

ほぼすべての業種で見通しが好転しました。 製造業の今期予想営業利益の減益率は、 秋号時点に比べて12.1%ポイントも縮小しました。

一方、 非製造業は、 移動自粛や在宅勤務の浸透で鉄道会社の見通しが一段悪化したことから陸運業が赤字転落、 空運業も赤字幅が拡大しました。 空運で国内線、

国際線ともに首位のANAホールディングスは、 第2四半期決算を発表した10月27日に、 今期はじめて通期の業績見通しを発表。 人件費の圧縮などに努めるものの、

後半の回復も鈍く通期で巨額赤字に沈む見通しです。 ただ情報・通信業のソフトバンクグループが世界的な株高により投資先の評価益が大きく膨らむこともあり、

非製造業全体の今期予想営業利益の減益率は、 秋号時点に比べて5.1%ポイント縮小しています。

市場別に見ますと、 大幅減益に沈む1部、 2部、 JASDAQを尻目に、 ネット関連企業が多い新興市場の利益は倍増となる予想です。

ソーシャルディスタンスなどの新常態とネットの親和性が高いこともあり、 業績を伸ばす会社が目立ちます。 規模の大きいメルカリの赤字縮小も利益を押し上げました。

四季報では、 来期は大規模感染が起きない前提で予想を立てています。 来期の営業利益は、 全産業で32.0%増益と大幅回復の予想です。 ただ今期と同様、

回復局面でも業種間や同一業種内で格差が生じる“まだら回復”となる可能性は高そうです。

業種別、 市場別の調査結果の詳細、 また集計の基礎となる個々の会社の業績見通しは12月16日発売の『会社四季報2021年1集・新春号』に掲載します。

(注)業種別、 市場別業績集計の算出方法

『会社四季報 2021 年1 集』掲載会社で、 今期・来期の予想および実績2期分がある企業の業績を集計。 実績・予想とも連結決算の数値を優先。 ただし、

決算期変更企業、 連結決算方式変更企業、 上場企業の子会社は除く。 銀行、 保険の営業利益は集計していない。

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