マンダム、清涼成分「l-メンチルグリセリルエーテル」にTRPV1の活性を抑制する効果を発見

コロナ禍のマスク着用生活のストレスを軽減する、不快刺激が少なく持続的な清涼感を実現 株式会社マンダム(本社:大阪市、 社長執行役員:西村健

以下マンダム)は化粧品(医薬部外品を含む)の機能や使用感の向上を目指し、 皮膚における感覚刺激に着目した研究を行っています。 その一環として、

快適な清涼感の実現に向けてさまざまな研究に取り組んでいます。

高い外部温度や化粧品に含まれる成分の影響により、 肌に痛みや灼熱感といった不快刺激が引き起こされる場合があります。 今回、

l-メンチルグリセリルエーテル(化粧品成分表示名 メントキシプロパンジオール)に不快刺激を抑制する効果と、 清涼感が持続する性質があることを確認いたしました。

この成果はコロナ禍の現状において、 マスク着用生活の中で感じる不満の解消にお役立ちできる、 快適な清涼感の提供に繋がると考えます。

なお、 本件は2021年7月15日に開催される、 第86回SCCJ研究討論会(Web開催)において発表を予定しています。 * 研究の背景

清涼感を得られるアイテムは、 例年「猛暑」「酷暑」といった言葉が飛び交う暑い夏はもちろん、 リフレッシュの際にも利用されるなど、 使用シーンが広がっています。

そのため「清涼感」と言っても、 強さや持続時間など、 使用シーンやアイテムによって求められるものは異なります。

マンダムではさまざまな場面で快適な清涼感を提供できるよう、 研究に取り組んでいます。

一般的によく使われる清涼成分l-メントールは、 強い清涼感を感じられるといったメリットとともに、

高い外部温度で引き起こされる不快刺激を抑制する効果も持っています。 一方で、 揮発しやすい成分であるため清涼感が持続しにくいという課題点があります。

本研究では、 マンダムが提供する快適な清涼感のひとつとして、 不快刺激が少なく持続力のある清涼感の実現を目指しました。 * 1. l-メンチルグリセリルエーテルがTRP(トリップ)V1の活性を抑制することを発見

高い温度や化粧品に使用される一部の成分により、 痛みや灼熱感などの不快刺激が引き起こされることが知られています。 この不快刺激には、

細胞の感覚センサーであるTRP(トリップ)チャネル※1の一種で、 トウガラシの成分の受容体でもあるTRPV1が関与しています。

この不快刺激を低減するためには、 TRPV1の活性を抑制することが効果的です。 これまでも、 清涼成分l-メントールにTRPV1

の活性を抑制する効果があることがマンダムの研究でわかっていました※2。 そのl-メントールと構造の近い(図1)l-メンチルグリセリルエーテルには、

さらに高いTRPV1抑制効果があることを見出しました(図2)。 * 2. l-メンチルグリセリルエーテルが有する皮膚への浸透性・残存性

汎用されるl-メントールは揮発性が高いため、 清涼感の持続性が低いことが課題です。 対してl-メンチルグリセリルエーテルは揮発性が低いため、

皮膚上や皮膚内に長時間残存すると考えられます。

これについて皮膚モデルを用いた浸透性試験で検証したところ、 l-メンチルグリセリルエーテルはl-メントールよりも多く皮膚へ浸透し、

長く留まることを新たに確認しました(図3)。 このことから、 l-メンチルグリセリルエーテルは、

l-メントールよりも長時間に渡って清涼感を感じられると推察されます。 * 3. l-メンチルグリセリルエーテルでマスク着用時でも不快刺激が少なく、 持続的な清涼感を実現できる可能性

コロナ禍によりマスクを着用する生活が日常になっている中、 多くの生活者がマスク内の暑さやムレといった不満を感じています※3。

この不満に対して本研究で見出した技術が活用できると考え、 検証を行いました。

≪検証内容≫

l-メンチルグリセリルエーテル、 l-メントールについて、 それぞれを2.5%配合したモデルマスク用ミストを塗布したマスクの着用試験を行い、

清涼感・刺激感について比較検証を実施

≪評価方法≫

不織布マスクの内側にモデルマスク用ミストを2 プッシュ(約0.2mL)噴霧し乾燥させたマスクを着用し、 60 分後の清涼感・刺激感について着用評価を実施

≪評価結果≫

・清涼感:l-メンチルグリセリルエーテルの時間経過に伴う清涼感スコアの減少は、 l-メントールよりも緩やかで持続性が見られた(図4)

・刺激感:目刺激感、 肌刺激感ともにl-メンチルグリセリルエーテルはl-メントールよりも刺激感が低かった(図5)

上記により、 l-メンチルグリセリルエーテルの方が、 不快刺激が少なく持続的に清涼感を得られる成分であると言える。

≪考察≫

TRPV1をはじめとするTRP チャネルの活性化温度閾値はpH によって変化することがわかっています。 皮膚の弱酸性という性質がTRP の温度閾値を低下させ、

夏場の外気温やマスク内の温度によってTRPV1が活性し、 灼熱感等の不快刺激が引き起こされている可能性があります。 しかし、

清涼成分l-メンチルグリセリルエーテルの配合により、 TRPV1の活性を抑制し、 灼熱感等の不快刺激を低減したことで、

快適な清涼感を感じることができたと考えられます。 マスクの着用は日常的に長時間であり、 なおかつ顔は皮膚が薄く全身の中でも刺激を感じやすい部位であるため、

持続性があり不快刺激が少ない清涼感を得られるl-メンチルグリセリルエーテルは、 適した清涼成分だと言えます。

さらに、 l-メンチルグリセリルエーテルには発汗時に清涼感強度が高まるという特徴もあり※4、 上記の結果と合わせて夏場のマスク生活において、

マスク内の暑さ等のストレス軽減に繋がることが期待できます。

今回の結果から、 TRPV1抑制効果の高いl-メンチルグリセリルエーテルを清涼感のキー成分として使用することで、

不快刺激が少なく持続する清涼感を提供できると考えています。

マンダムでは、 今後も清涼感に関する研究を継続し、 生活者の使用シーンに寄り添った、 より快適な清涼感を提供できる製品を上市します。

※1 TRP=Transient Receptor Potential。 様々な感覚受容に関与する陽イオンチャネルファミリーで、

化学物質や温度などを感知して電気信号に変換するセンサー

※2 「マンダム、 メントールによる鎮痛のメカニズムを解明」 2015 年12 月10 日リリース

https://www.mandom.co.jp/release/pdf/2015121001.pdf

※3 2020 年6 月/16 歳~24 歳/男性/n=204/NET 調査/マンダム調べ

※4 「マンダム“心地よい清涼感”の研究と応用 清涼感に対する発汗の影響」 2009 年4 月10 日リリース

https://www.mandom.co.jp/release/pdf/2009041001.pdf

【参考資料】

図1 l-メンチルグリセリルエーテルとl-メントールの構造

図2 TRPV1 抑制効果

図3 皮膚浸透性試験の結果

図4 着用試験結果(清涼感)

図5着用試験結果(刺激感)