資生堂、健やかな肌の維持に重要な角層育成の新たなメカニズムを解明 ~角層重層化を抑え、スキンケア成分の浸透促進が期待される薬剤を発見~

~角層重層化を抑え、スキンケア成分の浸透促進が期待される薬剤を発見~ 資生堂は、 50年以上にわたり続けてきた角層研究から、 今回新たに、

正常な角層構築・機能維持に「SERPIN B12(別名:YUKOPIN)(以下、 YUKOPIN)」が関与していることを発見しました。 本研究において、

YUKOPINが肌のターンオーバーを促す酵素メソトリプシンの働きを阻害することで、 角層の重層化を促進することを明らかにしたことに加え、

YUKOPINの発現を抑制する薬剤を見出すことに成功しました。 さらに、 加齢に伴い角層が重層化した肌では、

グリセリンやトラネキサム酸などのスキンケア成分の浸透が妨げられることを確認しました。 つまり、 YUKOPINに着目したアプローチを行うことで、

角層を健やかに保ち、 日々のお手入れの効果が高まることが期待されます。

資生堂では独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチのもと、

肌内部のうるおいを保つために重要な要素として角層の状態に着目し、 角層を健やかに保つための研究開発に取り組んでいます。 本研究の成果の一部は、

学術雑誌「IFSCC※1 Magazine」および、 「第49回 欧州研究皮膚科学会議(ESDR)」(2019/9/18-9/21)にて発表しました。

※1:IFSCC:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists

世界中の化粧品技術者が集い、 より高機能で安全な化粧品技術の開発に向けて取り組む国際機関

《研究背景》

資生堂は、 50年以上に渡り角層研究に取り組み、 肌の保湿状態は水分、 天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor; NMF) 、

脂質のバランスが重要であること、 また、 角層の個々の成分の働きや状態を高めて角層を育成するという「コルネオ育成理論」を提唱し、

美肌作りをさらに進化させてきました。

肌の美しさ・健やかさを保つうえで、 角層が担うバリア機能や保湿機能は重要ですが、

古い角層が剥がれて(角層剥離)新しい角層に更新する「ターンオーバー」という現象でそれらの機能を維持しています。 これまで資生堂は、

紫外線など環境刺激などで正常な角層形成が乱されると「不全角化」を伴った未熟な角層が生成されること、 その因子が「Serpin

b3」というタンパク質であることを、 研究によって明らかにしてきました。

一方、 加齢に伴い、 角層剥離とターンオーバーは起こりにくくなり、 角層が重層化することは知られていましたが、 その原因は十分には解明されていませんでした。

そこで、 当社では研究を進め、 角層剥離とターンオーバーを促進する酵素であるメソトリプシンが年齢とともに減少することを見出し(図2)、

さらにその詳しいメカニズムに迫るべく、 研究を続けました。

《酵素メソトリプシンの抑制因子「YUKOPIN」の発見》

今回、 年代別の皮膚組織を分析することで、 加齢により角層中でYUKOPINというタンパク質が増加することを発見しました(図3)。 また、

YUKOPINの発現を高めた皮膚培養モデルでは、 角層が重層化することが明らかになり(図4)、

YUKOPINは角層剥離を抑制する機能を有することを見出しました。 さらに生化学的実験から、 角層剥離を促進し、

その機能が加齢により低下することが確認されている酵素メソトリプシンの活性に対して、 YUKOPINが生体内で抑制的に働く因子であることを初めて明らかにしました。

すなわち、 年齢に伴う角層の重層化のメカニズムの一端は、 メソトリプシンとYUKOPINのバランスの乱れによるものであることを発見しました。

《YUKOPINの遺伝子発現を阻害する薬剤の探索》

角層剥離を阻害する働きを持つことがわかったYUKOPINについて、 その機能を抑える薬剤の探索を行いました。 その結果、

マメ科植物の一種であるメリロート葉の抽出液(図5)やサトウダイコン由来成分といった成分に、 YUKOPINの遺伝子発現量を抑制する効果を見出しました。

《角層が重層化した加齢皮膚におけるスキンケア成分の浸透量の低下》

角層重層化による肌への影響を調べるために、 ヒトの皮膚にグリセリンやトラネキサム酸が含まれる化粧水を塗布し、 角層中のグリセリン、

トラネキサム酸の量をLCMS※2 及びDESI MSI※3 で定量・可視化しました。 結果、 角層が重層化している加齢した肌では、

若い肌に比べて成分の浸透量が少ないことを確認することができました(図6)。

※2:LCMS: 液体クロマトグラフィー質量分析。 化合物の分離・同定・定量を行う手法。

※3:DESI MSI:脱離電解噴霧イオン化質量分析イメージング。 目的とする成分の空間分布データを取得する手法。

資生堂は、 外界と接し、 化粧品効果にも大きな影響を及ぼしうる重要な部位である角層の研究に長年挑み続け、 新しい知見を生み出し続けてきました。

当社角層研究の最新知見として、 本研究の成果は、 化粧品開発へ積極的に応用し、 個々人の肌に合わせた新たなエイジングケアの提案へつなげていきます。

R&D理念「DYNAMIC HARMONY」とは

・資生堂、 独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」を制定(2021年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003252&rt_pr=trk93

・「DYNAMIC HARMONY」特設ページ

https://corp.shiseido.com/jp/rd/dynamicharmony/?rt_pr=trk93

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003373&rt_pr=trk93

▼ 資生堂 企業情報

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