「カスピ海乳酸菌」が便秘傾向者の腸内細菌叢に与える影響を確認

日本農芸化学会2024年度大会で発表予定 フジッコ株式会社(本社神戸市:代表取締役社長執行役員 福井正一)は、「カスピ海乳酸菌(クレモリス菌 FC

株)」の継続摂取が、便秘傾向者の腸内細菌叢に与える影響を確認しました。この研究成果は、日本農芸化学会 2024

年度大会(2024年3月24日~27日)にて発表いたします。

腸内には腸内細菌がおよそ1,000種類、100兆個も生息していることが知られています。近年、この腸内細菌が便秘のみならず、体全体の健康に様々な影響を与えることがわかってきました。腸内細菌叢に影響を与えるものとしては、乳酸菌やビフィズス菌がよく報告されています。これまでにフジッコでは、「カスピ海乳酸菌」の便通改善作用や整腸作用を確認してきました(1,2)。しかし、この「カスピ海乳酸菌」が腸内細菌全体に与える影響についてはまだ明らかにされておりませんでした。

今回の研究では、便秘傾向の健常成人男女に「カスピ海乳酸菌」を含むハードカプセルを 4

週間摂取してもらい、腸内細菌叢に与える影響を測定するとともに、便通改善作用との関連を調べました。

その結果、「カスピ海乳酸菌」の摂取により便通改善作用が確認できました。また、これまで便秘との関連が知られていたビフィズス菌や乳酸菌が増加しているだけでなく、オシロスピラ属細菌※1が減少していることが確認できました。また、排便状況の改善とオシロスピラ属細菌数が関係している(排便状況が改善しているほどオシロスピラ属細菌数が減少している)可能性も示唆されました。

これらの結果から、「カスピ海乳酸菌」からは便通改善作用とともに様々な腸内細菌を変化させる可能性を見出せました。腸内細菌は体全体の健康に深く関わっていることから、「カスピ海乳酸菌」が、腸内細菌叢の変化を通して、さらに体全体の健康に寄与している可能性も考えられます。フジッコでは、今後も「カスピ海乳酸菌」の腸内細菌叢への影響を明らかにし、皆様の健康に寄与できるよう研究を進めてまいります。

【注釈】

※1 オシロスピラ属細菌:ヒト腸内で短鎖脂肪酸である酪酸を産生する優勢菌の一つであり、便秘の人ではその細菌数が多い傾向があることが報告されている。

【引用文献】

(1) M. Watanabe et al. Int J Food Sci Nutr, 74, 695-706(2023).

(2) 戸田ら 薬理と治療, 45(6), 989-997 (2017).

図1. カスピ海乳酸菌摂取による排便回数とオシロスピラ属細菌の変化

4週間の介入前後での排便回数(A)及びオシロスピラ属細菌の占有率(B)の変化を

調べました。プラセボ摂取群(N=21)及びカスピ海乳酸菌摂取群(低用量・中用量・

高用量の3群:それぞれN=21,22,21)の合計4群での比較になります。値は平均値±

標準誤差であり、*はp<0.05で有意、#はp<0.1で有意傾向があること(対応のある

t検定)を示しております。

図2. オシロスピラ属細菌と排便指標の相関関係

4週間の介入後の、オシロスピラ属細菌の占有率と、排便回数(A)、排便日数(B)

及び便の形状スコア(C)との関係について、ピアソンの相関分析により調べました。

排便回数及び排便日数とオシロスピラ属細菌占有率の間には有意傾向が、便の形状スコ

アとオシロスピラ属細菌の間には有意な相関が見られました。また、3つの排便指標との

間では、いずれにおいても負の相関関係が見られ、排便指標が良好になればなるほどオシ

ロスピラ属細菌の占有率が低下しておりました。

* 発表の詳細

学 会:日本農芸化学会2024年度大会(

https://www.jsbba.or.jp/2024/

会 期:2024年3月24日~27日

場 所:東京農業大学 世田谷キャンパス

演題番号:3D1p04

演題名 :Lactococcus cremorissubsp. cremorisFC株の摂取が便秘傾向者の腸内細菌叢に及ぼす影響

発表者 :田畑祥之、渡辺真通、後藤弥生、鈴木利雄、丸山健太郎(フジッコ株式会社)

要 旨:

【目的】Lactococcus cremorissubsp. cremorisFC(L. cremoris

FC)には便通改善作用があることが明らかになっている(1)が、腸内細菌叢に及ぼす影響についてはいまだ不明である。 本試験ではL. cremoris

FC摂取による便秘傾向者の腸内細菌叢の変化を測定し、便秘症状との関連を検討した。

【方法】便秘傾向者を対象にして、プラセボまたはL. cremoris

FCを含むハードカプセルを4週間継続摂取させた(プラセボ群21名、FC群:低用量21名・中用量22名・高用量21名)。摂取前後での糞便サンプルを回収後、Miseq

による16S rRNAシーケンス解析により腸内細菌叢を解析した。

【結果】プラセボと比べてL. cremorisFC摂取によりα多様性及びβ多様性の有意な差は見られなかった。一方、属レベルでは、L. cremoris

FC摂取群において、摂取前後でOscillospira属の有意な減少が、Bifidobacterium属、Lactococcus属及びCollinsella

属において有意な増加が見られた。

【結論】L. cremorisFCは便秘傾向者の便通改善に伴い、腸内細菌叢を変化させることが示唆された。

(1) M. Watanabe et al. Int J Food Sci Nutr, 74, 695-706 (2023).

* 問い合わせ先

フジッコ株式会社

担当者:イノベーションセンター 基盤研究グループ 田畑 祥之

責任者:イノベーションセンター センター長 丸山 健太郎

TEL:078-303-5385

ホームページアドレス:

https://www.fujicco.co.jp