病気の子どもと家族のトータルケアを考える

病気の子どもと家族のトータルケアを考える 設立30周年記念 ファミリーハウス・フォーラム2020

病気の子どもと家族のための滞在施設を運営している認定特定非営利活動法人ファミリーハウス(東京都千代田区、 理事長:江口八千代、 以下「ファミリーハウス」、

https://www.familyhouse.or.jp/)は2020年12月5日、

国立がん研究センター理事長・総長の中釜斉先生をゲストにお招きし、 「病気の子どもと家族のトータルケアを考える」と題したフォーラムを開催しました。

今回はオンラインでの開催となったこともあり、 全国より、 小児科医や看護師、 ソーシャルワーカーなどの医療従事者をはじめ、

120名以上の皆さまに参加いただきました。 中釜先生のお話の中では、 「日常生活の中で治療を受けること」や「社会全体で患者を支えていくこと」の重要性に触れ、

これまでファミリーハウスが果たしてきた役割を評価いただいた上で、 活動のさらなる発展を期待される内容でした。

ファミリーハウスは、 1991年の設立以来、 都内で9つのハウスを運営し、 年間約8千人の子どもと家族の、

病気のときだからこそ大切にしたい“ふつうの生活”を支えてきました。 そしていま目指しているのは、

より重篤な症状の子どもが医療ケアを受けながら家族と過ごせる「理想の家」の開設です。 当フォーラムでは「理想の家」の必要性に関する提言を行い、

また実際患児がファミリーハウスを利用する医療従事者からの応援メッセージも配信しました。 次の30年に向け、 新たなスタートとなりました。

イベントレポートはこちらのWEBサイトへ

http://archive.familyhouse.or.jp/JKA/forum20201205/

プログラム

ファミリーハウスの活動紹介/ファミリーハウス 理事長 江口八千代

基調講演

「がんの最新治療」「がん治療の今後とがん患者の全人的ケア」/国立がん研究センター理事長・総長 中釜斉先生

ファミリーハウスのこれから

同理事長・江口八千代/同理事・事務局長 植田洋子/同理事 小山健太

ファミリーハウスの江口理事長(中央)、

植田事務局長(右)、

小山理事(左)がスタジオから配信しました。

ファミリーハウスの江口理事長(中央)、 植田事務局長(右)、 小山理事(左)がスタジオから配信しました。

中釜先生のオンライン講義の様子。

がん治療の最前線のお話を伺いました。

中釜先生のオンライン講義の様子。 がん治療の最前線のお話を伺いました。

【基調講演】

国立がん研究センター理事長・総長 中釜斉先生プロフィール

1982年東京大学医学部卒業。 1990年同大学医学部第三内科助手。 1991年から米国マサチューセッツ工科大学がん研究センター・リサーチフェロー。

1995年以降国立がんセンター研究所発がん研究部室長、 生化学部長、 副所長、 所長を歴任。 2016年4月より国立がん研究センター理事長・総長。

ヒト発がんの環境要因、 及び遺伝的要因の解析とその分子機構に関する研究に従事してきた。 分子腫瘍学、 がんゲノム、 環境発がんが専門。

中釜先生には、 「がんの最新治療」と「がん治療の今後とがん患者の全人的ケア」のふたつのテーマでお話しいただきました。 前半では、 がん発生のメカニズム、

日本における治療法、 治療薬について、 また、 現在の医療体制と、 希少がんおよび小児がんに対応するための今後の枠組みなどを、 主にゲノム医療の観点から、

資料を用いてご説明くださいました。 現在の日本におけるがん治療最前線を知ることができる貴重なお話でした。

後半は、 がんになった人が、 望む人生を可能な限り実現できるよう、 心身はもとより、 社会環境を整える必要性など、 広義の医療、

ケアの観点からのお話がありました。 まさに、 当フォーラムのテーマでもある、 トータルケアについてです。

がんによってもたらされる“全人的苦痛(トータルペイン)”には、 1:身体的苦痛、 2:精神的苦痛、 3:社会的苦痛と定義される、 仕事や家庭、

経済的な問題に加え、 4:スピリチュアルな苦痛が含まれると考えられています。 それは、 「なんで自分が」という自問や、 死への恐怖などに代表される苦痛です。

2人に1人が生涯でがんに罹患する時代、 こうした、 主に4つの苦痛で構成される全人的苦痛を、 どのようにケアし、 共生に取り組めるよう支援できるか。

医療機関のみならず、 社会全体が共有すべき重要な課題としてお話しくださいました。

中釜斉先生インタビュー

中釜先生により言及された“全人的苦痛(トータルペイン)”。 患者だけではなく家族もまたそれを抱える当事者であり、 特に患者が子どもである場合には、

増大する可能性が高くなります。 全人的苦痛にさらされる家族へのケアは、 子どもが治療生活を送る上で欠かせないものであり、 私たちファミリーハウスも、

それに対応するトータルケアの一端を担っているとの意識で活動しています。 中釜先生には、 子どもの患者と家族、 そしてファミリーハウスの活動に寄せたお話を、

基調講演とは別にインタビュー形式でお聞きしました。

「患者を社会全体で支えていくことが重要」と中釜先生。

「患者を社会全体で支えていくことが重要」と中釜先生。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて

―がん治療は近年、 長期入院から通院治療に変化してきたわけですが、 この度の新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、 医療、 病院のあり方にもまた、

あらたな課題が出てきたと考えています。 がんの治療のため通院をすることで、 感染のリスクが高まるという可能性も考えていかなくてはなりません。

特に小児がんの場合はご家族の付き添いが必要ですから、 人が集まる不安な状況ができかねません。 そうした中で、 どのように医療を提供すべきか。

病院だけではなく周辺施設の充実をはかる必要があり、 地域との連携はますます重要になります。 ファミリーハウスの存在意義はこれまで以上に増すものと考えています。

治療生活は社会全体で支える

―小児の患者さんの場合は、 身体的、 精神的苦痛が、 成人とは異なる形で出ることがあります。 思春期、 人格的形成に重要な時期には、

そこにも配慮する必要があります。 社会生活、 日常を大切に、 前向きに治療に取り組みやすい環境を、 社会全体として整えるべきでしょう。 大人の我々でも、

治療期間中に気を許せる身内が近くにいてくれるだけで気持ちの持ちようが大きく違ってきます。 病気は一人で治すものではないですよね。

周りで見守ってくれる人がいると、 立ち向かう力が出ます。 そこにはやはり、 さまざまな人の協力が必要ですし、 できるだけのことは、

社会全体で担っていくべきだと考えます。

「理想の家」に向けて

―近年になり、 全人的ケアという概念が広がってきましたが、 当初よりそのような理念を持っていたファミリーハウスは、 当時としては特に先進的であったと思います。

その存在は、 これまで多くの患者さんに安心を与えていますし、 我々にとっては教師のような、 今後も見ていきたい社会的取り組みであると思っています。

新型コロナウイルス のこともありますが、 治療のための来院に1時間かかるのと、 5分でそれができるのとでは、 心理的にも違いがあって、 近ければ、

一緒に取り組んでいるのだという一体感も一層感じられます。 ファミリーハウスが活動を継続し、 発展させていくためには、 地域を始め、

さまざまな立場の担い手の協力が必要になりますので、 我々もできる後押しはしたいですし、 築地市場跡地(「理想の家」)で実現すれば、 尽力したいと思います。

【ファミリーハウスのこれから】

中釜先生の講演、 およびインタビューを受けて、 ファミリーハウスの理事長・江口八千代、 理事・事務局長・植田洋子ならびに理事・小山健太の三名で、

「ファミリーハウスのこれから」をテーマにセッションを行いました。

Q.ハウスで利用者を受け入れるうえで大切にしていることは何ですか?

植田:「一人ひとりを大切にする」ということを、 一番大事にしてきました。 一人ひとり、 病気も家庭の事情も異なり、 それぞれに違う日常をお持ちです。

日常を支えたいと考えたとき、 自ずと、 相手を理解して個別性を尊重することに行き着きます。 また、 「なんで自分が」という、

スピリチュアルな苦痛と向き合う利用者さんが、 ハウスで同じような仲間の存在に出会うことで、 居場所を得られる。 そうしたコミュニティでありたい。

適度な距離を保ちながらも、 「誰かの気配がある」「どこかで見守ってくれている人がいる」というのが支えになると、 利用者さんからも言っていただくことがあります。

Q.コロナ禍で、 気を付けていることは何ですか?

植田:免疫力の落ちた状態のお子さんを前提に、 感染症対策にはかねてから非常に力を入れてきました。 新型コロナウイルス感染症においても、

これまでの経験からスムーズに対応できたと思います。 重篤な患者さんもいらっしゃるので、 医療従事者と連携しながら、 きめ細やかな安全対策を講じました。 また、

今回の場合は、 性質上、 スタッフの安全を守るための対策にも、 心を砕く必要がありました。

江口:ノロウイルス等を想定したマニュアルの整備は、 以前よりしていました。 今回は、 専門の医療従事者とも相談しながら、 さらにマニュアルの充実をはかりました。

Q.ハウス運営の在り方は30年間でどのように変わってきましたか?

植田:立ち上げ当時は「屋根さえあればいい」と言われていたと聞いています。 長期入院が一般的でしたので、 利用するのも多くはご両親のみでした。 運営においては、

試行錯誤を重ねた結果、 現在は、 ケア体制として「三機能の連携」が重要であるとの認識が明確になっています。

Q.ハウス利用者のニーズは30年間でどのように変わってきましたか?

江口:30年前は、 とにかくご両親が“泊まるところ”が必要だったんですね。 親戚の家やホテルには、 精神的、 経済的に滞在しにくいとき、

「ただいま」と言える場所を用意して喜ばれました。 長いときには2年近く入院する子どもいた時代です。 現在は、 病院ではできるだけ治療のみを受けてもらい、

日常生活を送るためになにが必要なのか、 多様なニーズに個別に対応できるよう努めています。 より高い専門性も求められるようになりました。 将来的には、

ハウスでの看取りも視野に入れていく必要があると考えています。 そのためには訪問医療との綿密な連携はもちろん、 ハード面での、

これまで以上の整備が課題になってきます。

Q.理想の家で実現したいことは何ですか?

江口:症状によって、 車椅子、 ストレッチャー、 吸引などが必要なるケースがあり、 ハウス専用に設計された施設でなければ、 滞在自体が困難になりかねません。

皆さまの協力を得て、 なんとかして立地の良い築地市場跡地に開設したいとの思いです。 「理想の家」では、 医療だけではなく、 学校や保育と連携したり、

子ども同士、 親同士が交流できる環境づくりをしたりして、 日常の再構築のお手伝いが、 いま以上にできるようにしたいです。

実施概要

イベント名:ファミリーハウス・フォーラム2020

開催日:2020年12月5日(土)13:30~16:00

方法: オンライン形式

主催: NPOファミリーハウス(2020年度オートレース補助事業)

後援:厚生労働省

国立研究開発法人国立がん研究センター

東京都

中央区

公益社団法人日本小児科学会

公益社団法人 日本看護協会

一般社団法人日本小児血液・がん学会

一般社団法人日本小児看護学会

特定非営利活動法人日本小児がん看護学会

全国病弱教育研究会

【ファミリーハウス紹介】

利用者それぞれの個別の事情に即し、 丁寧な対応を貫いてきたこと、 新型コロナ感染症拡大という、 これまでにない事態においても、 長年の経験を生かし、

無事故での運営を継続できたこと、 そこにはたくさんの協力者の存在がありました。 ファミリーハウスの活動はまた、

医療の進化に伴いさらに多様化するニーズに応えるべく、 次のステップを求められています。 開設を目指す「理想の家」のプロジェクトは、

そのような流れの中で立ち上げられたものです。 免疫力が低い状態にある子どもにとって、 通院しやすいこと、 また、 病院との連携が必須であることから、

立地は最も重要な条件のひとつであり、 国立がん研究センター中央病院、 聖路加国際病院にほど近い築地市場跡地に開設を働きかけています。

ぜひ皆さまのお力をお貸しください。

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