「大切な人の自死」を経た著者が贈る、「遺された人々」のこれから。『逝ってしまった君へ』ついに発売!

2019年1月。 私は、 古い友人のひとりを失った。

友人は突然、 自らの意思で死を選んだのだ。

彼は私の大切な友人でもあり、 私のはじめての恋人でもあった――

作家として声優として活躍中のあさのますみ氏。 2020年3月、 自らの意志で死を選んだ友人についてのエッセイをWEB上で公開しました。

「大切な人の自死」「遺された人々の想い」を綴った当作は、 「鬱」「自死」といった昨今の深刻な社会問題を扱いながらも、

「それでも君がこの世界に必要な理由」を切実に訴える内容が多くの読者の胸を打ち、 大きな話題を呼びました(「cakesクリエイターコンテスト2020」受賞)。

この度、 書籍化が望まれていた当作を大幅に加筆しまとめた長編エッセイ『逝ってしまった君へ』が、 小学館より発売されました。

【本書の内容】

あさのますみが体験した、 大切な人の「自死」。

大切な人を失って初めてわかる、 大きな悲しみと日々の「気づき」。

遺書にあった自らに向けたメッセージ、 告別式、 初めての「遺品整理ハイ」…そして「君」を失った悲しみの中で見つけた一つの光。

『誤解を恐れずに言ってしまうけど、 君を失って、 私はひとつ、 大きなものを得ました。 それは、 自分を自分のままでいいと思える強さです』

『たった一つのものさしで自分を測ることに、 意味なんてない』

『君がそこにいてくれることが、 すべてでした。 君の存在そのもので、 私はどこまでも満ち足りた気持ちになったのです』

あまりにも突然で悲しい出来事を経た「遺(のこ)された人々」のその想いを、 逝ってしまった「君」への手紙の形で綴る。

日々悲しみの中にいるあなたにこそ読んでほしい、 大切な人へ向けた祈りに満ちた随想録。

【書籍情報】

『逝ってしまった君へ』

著者 あさのますみ

定価1650円(税込)

発売日2021/6/30

四六判・192P

ISBN 9784093888172

小学館

詳細はコチラから

https://www.shogakukan.co.jp/books/09388817

↓本書『逝ってしまった君へ』の一部抜粋。

誤解を恐れずに言ってしまうけど、 君を失って、 私はひとつ、 大きなものを得ました。 それは、 自分を自分のままでいいと思える強さです。

私の職業は、 声優。 人気商売です。 誰かに選ばれれば仕事があるし、 誰にも選ばれなければ、 その日の仕事はなし、 収入もゼロ。 そんな仕事です。

(小略)声優になって二十年、 自分で自分を活躍していると思ったことは、 ただの一度もありません。 私の周りには、 常に私より選ばれて、

忙しそうにスタジオを飛び回っている人がいる。 対して私は、 いつでもフル稼働、 というわけでは決してない。

そういう自分を、 たまらなく不甲斐なく思うこともあります。 選ばれない日が続くと、 「どこがいけないんだろう」と足りない部分ばかり数えて、

自分じゃない誰かを眩しく感じることもあります。 もしも仕事がなくなってしまったら、 今私の周りにいる人たちは、 きっと全員いなくなってしまう――そう想像して、

人生の軸を奪われるような恐怖に襲われることもあります。 自分がなんの価値もない存在に思えて、 恥ずかしく、 情けなく、 涙が出てしまったこともありました。

でも。 君を失って私は、 本当にギリギリのところで、 こう思えるようになりました。 「いや、 そうじゃないんだ」と。

君が遺したメモには、 仕事に関する不安が、 たくさん書いてあったでしょ。

「今の仕事を失ったらなにもない」「この会社でしか働けない」「周りの人たちが離れていく」――それはまさに、 私がいつも思うことで、 だからこそ、

そうじゃないのに、 と叫びたくなりました。 全然そんなことない、 そもそも君の素敵なところは、 そんなことではちっとも測れないのに。

私は、 何度も、 何度も、 何度も、 何度も――数えきれないくらいたくさん、 時には涙を流しながら「君が今、 生きてここにいてくれたら」と思いました。

そうしたら、 君が「もうわかったよ」と言うまで、 言葉を尽くして、 そうじゃないってことを伝えるのに。

どんなに願ってもそれが叶わなくなってしまった今、 私は代わりに自分自身に、 こう言い聞かせます。

「たった一つのものさしで自分を測ることに、 意味なんてない」

あまりにありふれた言葉で、 陳腐に感じるかもしれません。 でも私は、 君に伝えたかったと心の底から思ったとき、 この言葉が生まれてはじめて、

実感をともなって腹に落ちました。 そしてそのことで、 ともすると見失いがちだった自分自身を、 取り戻すことができました。 私はそれを、

君を失ったことで得た「強さ」だと思っています。

【あさのますみ氏プロフィール】

秋田県出身。

國學院大学卒業後、 声優に。

趣味はカメラ。

2007年、 はじめて書いた創作物が小学館で大賞を受賞。

それをきっかけに、 声優業は『浅野真澄』として、

文筆業は『あさのますみ』として、 名義を分けて仕事をするように。 現在、 猫や鳥と暮らしながら、 二足の草鞋で活動中。

【公式サイト】

https://www.masumin.net/

【公式Twitter】@masumi_asano