一定の条件下の旅行における認知症リスク低下の可能性を確認

~東北大学との認知症予防に関する共同研究結果~ クラブツーリズム株式会社(本社:東京都新宿区、 代表取締役社長:酒井博、

以下クラブツーリズム)と国立大学法人東北大学(宮城県仙台市、 大野英男総長)とは、 共同で「旅行が認知症予防にもたらす効果」を研究し、

一定の条件下の旅行における認知症リスク低下の可能性を確認いたしました。 本研究は、 2021 年 3 月の学術論文雑誌「Humanities and

Social Sciences Communications」に掲載されました。 2016 年 7 月より、

シニア世代の旅行に強みを持つクラブツーリズムと脳科学分野の世界的権威である東北大学加齢医学研究所が連携し、

同研究所の「生涯健康脳」研究の一環として瀧靖之教授の指導のもと、 医学的見地から調査・研究を行ってまいりました。 本研究では、 クラブツーリズムの 60

才前後の顧客 835 名を対象に実施したアンケート調査のデータを解析・研究しました。

解析によって、 知的好奇心のひとつである「拡散的好奇心」(*1)が旅行の動機となっていることが確認され、

旅行を通じ認知刺激を受けることで「拡散的好奇心」が満たされ、 結果として「主観的幸福度」が高まるというメカニズムが解明されました。 また、

旅行頻度が高まるほど「主観的幸福度」が高まる傾向にあることが分かりました。

先行研究において「主観的幸福度」は認知症リスクを低減させる効果があることが証明されていることから、

旅行によって認知症リスクを低下させる効果がある可能性が示唆されました。

ただし、 好奇心のうち「特殊的好奇心」(*2)と旅行動機の関連性は認められませんでした。 「拡散的好奇心」と「特殊的好奇心」の強弱は、

個人の好奇心特性に起因しますが、 同じ人間でもライフステージなどの環境によって変化すると考えられています。 また、

前述した個人の好奇心特性や暮らし向きなど生活状況の捉え方によっては、 旅行がストレスになる可能性も示唆されました。

*1:拡散的好奇心…物事に対して、 幅広く情報を求める性格特性

*2:特殊的好奇心…情報の不調和を解消するために、 知識を深めようとする性格特性

以上のことから、「暮らし向きが苦しい」と捉えているケースを除き、 物事に幅広く関心を持つ性格の人間にとっては、 旅行に行く機会が増えるほど、

認知症リスク低下が期待できることを本共同研究で導き出しました。

クラブツーリズムではこれまで、 「きっと見つかる私の旅。 」というコンセプトで、 お客様のさまざまな興味・関心にお応えできるよう、

テーマ性の高い旅行を数多く取り揃えて参りました。 この度の研究結果を受け、

お客様が楽しんで旅を続けられるシリーズツアー(一つのテーマを複数回に分けて楽しむ企画)のラインアップ強化や、

旅の可能性を広げるようなこれまでにない新しい切り口の企画の提案やサービスを通して、 より一層お客様の健康で心豊かな毎日に寄り添える企業を目指してまいります。

■研究概要

1. 調査の背景と目的

認知症の予防には、 運動・コミュニケーション・趣味と好奇心、 そしてストレスが少なく主観的幸福感が高い生活が効果的であると言われている。

旅行はこれらを全て含む活動であり、 頻回に旅行に行くことが認知症の予防に有効である可能性が考えられる。

<問題点>

(1)旅行と好奇心、 主観的幸福感の関係が明らかでない

(2)旅行が脳と認知機能に与える影響が明らかでない

<目的>

まず問題点 1 に対処するため、 旅行頻度と好奇心・主観的幸福感の関係を明らかにすることを目的とし、 アンケート調査を実施

2. 調査方法

当社顧客にアンケートを実施

(1)調査対象:

60 歳前後の男女 835 名(男性:437 名、 女性:398 名、 平均 65 歳) 当社ツアーの参加履歴がある方

(2)調査期間:2017年6月

(3)アンケート内容

旅行頻度を含む旅行に対する興味関心のほか、 年齢、 収入、 暮らし向き、 主観的健康状態、 職業、 家族構成など基本的情報の回答を求めた。 また、

認知的特性の評価のために知的好奇尺度、 主観的幸福度尺度、 知覚されたストレス尺度の回答を求めた。

3.調査結果

(1) 旅行頻度と拡散的好奇心

年に 10 回以上旅行に行く群は、 旅行頻度が低い群より拡散的好奇心が高い

(2) 旅行頻度と主観的幸福感

年に 10 回以上旅行に行く群は、 旅行頻度が低い群より主観的幸福感が高い

(※ほとんど行かない群は、 他の群との間に拡散的好奇心や主観的幸福感の差がなかった)

4. 旅行頻度・ 拡散的好奇心・主観的幸福感の 3 者の因果関係

・拡散的好奇心が強いほど旅行頻度が高く、 旅行頻度が高いほど主観的幸福感が高い

・拡散的好奇心が強いほど主観的幸福感が高いが、 その関係は旅行頻度に影響される

5.調査結果に関する見解

・物事に幅広く関心を持つ性格の人は、 旅行に行くほど主観的幸福感が高いことから、 旅行が主観的幸福感を通じた認知症予防に効果的である可能性が期待できる。

・ただし、 自分の関心事を深く追求したい性格の人は、 いわゆる物見遊山の旅行では幸福感は高まらず、 ストレスを感じてしまう可能性も示唆され、

旅行による認知症予防効果の立証に当たっては、 人の性格や旅行タイプ を考慮したさらなる調査が必要である。

6. 本研究に関しての瀧靖之教授コメント

脳の健康を維持するための活動や習慣は、 運動、 食、 睡眠、 趣味活動など様々なことが明らかになり始めているが、

個々人の興味関心や性格特性に応じた脳の健康維持活動を検討する上で、 旅行という選択も大きな可能性を秘めていることが明らかになったと考える。

(投稿論文情報)

Curiosity-tourism interaction promotes subjective wellbeing among older adults

in Japan.

著者:Totsune, T., Matsudaira, I., & Taki, Y.

論文媒体情報: Humanities and Social Sciences Communications. 8:69 (2021)

※クラブツーリズムはKNT-CTホールディングスのグループ会社です。