企業の意識を変えることが育児環境を刷新する一歩になるー「父親も当たり前に育児をする社会」の実現に向けて

~1ヶ月間の男性育休取得率100%を6年連続実現してきた施策と実績~ 今年、 育児・介護休業法が4月、 10月と改正されます。

今回の法改正は主に男性に焦点が当てられていますが、 核家族や働く女性の増加、 さらには働き方や育児スタイルが多様化している時代だからこそ、

男性が当たり前に育児をする・できるようになる社会の実現がますます望まれています。 そのためには育児者である父親・母親の頑張りだけではなく、

育児者を支える企業や職場に対しても、 さらなる育休支援の体制整備が必要で、 それを期待されての法改正ではありますが、

思うように社内制度や支援体制の整備が進まない企業も存在するのが現状です。

そこで、 母親だけでなく父親も当たり前に育児をする社会の実現を目指し、 早くから育休制度の設計や運用に乗り出し、

失敗や試行錯誤を経て蓄積されてきたピジョンのナレッジを公開いたします。 * 男性の育休取得の壁を探る ―見えてきた課題―

当社では、 このたび改正育児・介護休業法の施行に関連した意識調査(参考資料3)や、 社会状況の把握を目的とした企業ヒアリング(参考資料3)を実施しました。

その結果、 男性の育休取得の壁となっている課題が明らかとなりました。

上記3つの課題は、 当社が2006年に社内調査を行った際の自社課題と類似しており、 当社では課題解決に向けて今まで取り組んでまいりました。

2006年に運用を開始した、 1ヶ月間有給で取得できる育休「ひとつきいっしょ」は試行錯誤を経て、 現在では「1ヶ月間の男性育休取得率100%」を6年連続実現

しております。

そうした当社での取り組み内容とナレッジを公開し、 社会と共有することが、 育休制度の設計や運用に悩んでいる企業への手助けになると当社は考えます。

そのため今回は、「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」を経て改訂した当社の育児休暇制度や、育児休暇を取得した社員の声を紹介いたします。

育児に関わる企業である当社は、 今後も取り組みを推進し、 「社会全体が育児をしやすい環境」を実現するため、

今後もさまざまな形で情報発信と子育てに関わるサポートをしていきます。

* 課題に対するピジョンのアクション

1. 経済的不安を解消する取り組み

●制度の理解を深める個別フォロー

育休取得を検討する際、 漠然とした経済的不安を感じる男性社員が多くいました。 不安を解消するため、

当社では出産予定日の報告を受けた時点で育休制度の詳細を説明すると同時に、

育休を取得する場合の「雇用保険育児休業給付金の受給額」や「社会保険料の免除」等の仕組みを、 各社員のケースに沿って、

給与額の試算等も交えながら個別に説明を実施しています。 会社からの説明後に、

「どのタイミングで育休を取得するか」社員とご家族で相談してもらえるよう働きかけをしています。

また、 出産の際の家庭状況(里帰り出産の有無等)や、 夫婦以外の育児サポート体制などについても詳しく聞きながら、 育休取得への相談に乗っています。

社員によって状況が異なりますので、 全て個別対応を行っています。

●プラスαの制度も戦略的に導入

当社では、 2006年に「ひとつきいっしょ」という男性でも取得しやすい

有給による1ヶ月間の育休制度を導入しました。 1ヶ月間の育休の半分は、 会社が付与する「特別休暇(有給)」を利用し、 残りの半分は、

失効年休を積立てた「積立休暇」を利用します。 「積立休暇」が無い社員は、 会社から無給の休暇を特別に付与し、 雇用保険の「育児休業給付金」を活用します。

そうすることで、 1ヶ月間育休を取得しても経済的な不安を抱えずにすむよう制度を設計しました。

2. 制度の社内浸透と活用促進 ―育児休職取得対象者の意識を変える―

●育休取得に対して取得対象者を前向きにさせる、 トップが発信する強いメッセージ

育休取得対象者の中には「本当は取得したいけれど上司や同僚に迷惑をかけてしまう」や「本当に取得していいものか」という後ろめたさを抱える社員が多くいました。

そこで、 育休取得対象者の意識改革のために、 「男性も当たり前に育児をする会社でありたい」、 「積極的に育児をしてほしい」というメッセージを、

トップから全社的に発信しました。 トップから発信されることで、 社員全員が共通の意識を持ち、 また、

育休取得に対して不安や後ろめたさを感じていた取得対象者本人も安心して育休が取得できるようになりました。

●プライベートな要素も会社へ自由に自己申告できる

当社には自己申告制度」があり、 業務状況や社員自身が考える今後のキャリアを年に一度会社へ申告し、 さらに申告内容に関する上長との面談の機会も設けています。

申告時には、 「プライベート・家庭状況について会社に伝えておきたいこと」についても自由に自己申告ができる仕組みとなっています。 会社への公式な申告の中に、

今後の(本人・配偶者の)妊娠・出産予定や介護の可能性などの情報も組み込み、 育休取得申請への心理的ハードルを下げることが出来ています。

●スムーズな業務引継ぎ体制を築くための、 妊娠を早く申告できる体制整備

男性社員が育休取得を希望しない大きな理由として、 経済的不安の他、

「育休期間中の業務に対する不安」や「上司や同僚へ迷惑をかけるかもしれず心配」という声がありました。 業務の引継ぎ体制や不在時の職場を不安視するがゆえの声ですが、

現場でスムーズな引継ぎ体制を作ってもらえるよう、 妊娠を会社へ早期に報告してもらえる体制を整備しました。

育休取得対象者の「迷惑をかけてしまう」という心配軽減の一助となっています。

3. 企業風土の醸成 ―育児休暇取得対象者の上司や同僚に働きかける―

●制度の導入期には育休を取得“しない”場合の社長への報告ルールを導入

先述の通り、 男性社員が育休取得をしたいのに取得しない理由の上位には、 経済的不安の他、

「休暇期間中の業務に対する不安」や「上司や同僚へ迷惑をかけるのではという心配」があり、 「ひとつきいっしょ」の制度導入後も、

取得率はなかなか向上しませんでした。 そのため、 育休に送り出す側の上司や同僚の意識も変えていこうと『育児休暇を取得“しない”と申し出た社員が出た場合は、

所属長から社長へ理由とともに報告する』というルールを導入期には設けました。 その結果、 送り出す側も「きちんと育休を取らせ、

育児をしてもらおう」という意識へ大きく変わり、 その後は育児休暇取得率100%を維持しています。

●制度を知り、 愛着を持ってもらう“仕掛け”

育児休暇の取得対象者以外の社員にも、 制度を知って愛着を持ってもらうため、 2006年の制度導入時には、 制度のネーミングを社内公募で決定しました。

本公募には、 計82件の応募がありました。

大々的にネーミングを募集することで、 育休制度への社員の理解も深まり、 制度名に愛着を持つことができ、 社員が育休を身近に感じられるようになりました。

●「育休」だけが特別にならないようにするための全社的な働きかけ

育休だけを特別扱いすることで、 育休以外の理由での休みを取得しづらくなってしまわないよう、 「Smart &

Smile!Work」と名付けた全社的な取り組みを実施し、 働き方の最適化や休みを取得してのリフレッシュ等を推奨。

全社員に対して「誰もが休みを取れる・取りやすくなる」ための働きかけを行いました。自然発生で寄せ書きや復職時のWelcomeメッセージづくりなども

自然発生で寄せ書きや復職時のWelcomeメッセージづくりなども

これらの様々な取り組みの結果、 育児休暇取得者は、 不在の間フォローしてくれる同僚に対して感謝の気持ちを持ち、 育休へ送り出す社員は、

温かい気持ちで送り出してあげようという心遣いが根付き、 現在の企業風土が醸成されました。

* 社員で作り上げる育児制度

当社では2022年の育児・介護休業法の法改正に合わせた、 社内制度の見直しに向け、

子どもを持つ社員へ人事部が声をかけ「社員で作り上げる育児制度プロジェクト」を発足させました。 子育て中や、

過去に育休を取得した経験がある社員とその配偶者の声を活かしたことで、 実態に即した制度へ改訂することができました。

本プロジェクトについて、 詳しくはPR TIMES STORYをご参照ください。

●タイトル:男性の育休取得率100%のピジョンが、 社員とともに育児制度を改訂

~男性も女性も仕事と家庭を両立しながら働きやすい社会に

●URL:

https://prtimes.jp/story/detail/MxzAmwceajB

* 育児休暇を取得した社員の声

・社員O(研究企画職。 2022年4~5月に、 第2子の誕生に伴い2度目の「ひとつきいっしょ」を取得)

育休取得に際しては、 様々な制度をどのように組み合わせて

利用できるのか、 収入がどうなるのかが分からなかったため、 人事とメールや対面の打合せでやり取りしながら、

私の要望に沿った具体的な育休取得日を一緒にアレンジしてもらいました。 育休取得の半年前に取得時期の把握ができたので、 事前の業務調整も行いやすかったです。

育休と聞くと、 とかく育児にばかり意識が向きがちですが、 家事の存在も非常に大きいことを再認識しました。 例えば、 育児の時間を捻出するために、

普段よりも早く家事を終わらせる必要があることに気が付きました。 育休中は育児に加えて家事にも集中できたので、 家事スキルも少しは向上したように思います。

また、 育休中は長女の世話の大半が父親担当になったことで、 長女のケアにも時間を割くことができました。 特に出産のための入院中は長女と2人だけだったので、

長女とじっくり向き合うこともできました。 生まれたばかりの次女とはまだ意思疎通はできませんが、 抱っこしている時間が長くなるとその分愛着が生まれ、

父親としての自信にも繋がりそうです。

仕事面においては、 育児を経験していることで、 将来的に同僚や部下が同じ状況になったときに理解ある行動を取れるようになると感じました。 また、

子育ては同時に様々なことに素早く対応していく必要があり、 仕事にも通じるタスク管理と問題解決が求められました。 毎日育児に関わることで、

自分で問題に気づくことができるようになり、 妻の負担も減らせたと感じました。

妻も「最初の1ヶ月は母子ともに生きることに精一杯だったので、 そのタイミングに育休を取得してくれて良かったし、

父親にとっても生まれたばかりの赤ちゃんや普段の長女の様子を知る機会になって良かったと思う。 」と言ってくれました。 育休取得により、

親も様々なことに気づかせてもらいました。

・社員K(営業事務。 2022年2月に、 第一子誕生に伴い「ひとつきいっしょ」を取得)

「1ヶ月間仕事を休む」という、 これまでに経験のない長期休みの取得に対して「何かトラブルがあったらどうしよう」「休んでも大丈夫かな」など、

漠然とした不安がありました。 ですが、 子どもが生まれた時に上司から「いつ休むの?」と休むことを前提に声をかけていただき、

休みに入る際には上司・メンバーからは「いってらっしゃい」「育児がんばれ」などの明るい声掛けをもらったため、 不安が薄れました。

また復職時も「早かったね!全然大丈夫だったよ」と明るい雰囲気で迎えてもらい、 負い目を感じることも一切なかったです。

このように「ひとつきいっしょ」の制度を利用して、 妻の出産後すぐに育休を取得できたため、 ゼロベースから二人で家事・育児を協力することができました。

生活スタイルや育児の仕方など、 わからないことだらけでしたが、 育児に専念する時間を最初に持てたことで、

そこから生活のリズムや過ごし方を夫婦2人でつくることができました。

また育児は楽しいことだけではなく、 大変な側面もあるということを痛感したため、 2人で子どもを見ることができるように、 とにかく仕事を効率的に終わらせて、

早く帰宅することを意識するようになりました。 1ヶ月間育児に専念できたことで、

「復職後も自分も一緒に育てるんだ」「家族のために頑張ろう」とモチベーションのアップにも繋がりました。

* 【参考資料1】ピジョンの育児制度全体像(赤枠は今回の改訂対象)

ピジョンの育児制度全体像

ピジョンの育児制度全体像

今回の制度改訂では、 「ひとつきいっしょ」を軸とした制度を再検討し、 「はじめていっしょ休暇」や「配偶者の出産サポート休暇」等が誕生・改良されました。

制度改訂で、 従来よりも細かな部分にも行き届いた制度設計となり、 各社員の家庭状況や育児スタイルにもフィットしやすい制度となりました。

* 【参考資料】「育休」への意識調査

育休の当事者になるであろう「未来のパパ」※1の意識と、 すでに育休取得時期を経過した「パパ」の実情を把握することを目的に、

意識調査を実施しました(2022年1月)。

調査結果詳細:

https://www.pigeon.co.jp/news/files/pdf/20220309.pdf

※1 将来子を持つことを考えている男性(プレプレパパ)、 ならびに現在パートナーが第1子妊娠中の男性(プレパパ)の総称

※ 本調査における設問内での「育休」及び「育休制度」とは、

育児休業(国で定めた法律)と育児休暇(各企業が休暇制度のひとつとして任意で制定している制度)の両方を指しています。

●未来のパパの育休制度利用希望67.7%に対し、 パパの育休取得率は26.4%“未来のパパ”の育休取得意向(SA)

“未来のパパ”の育休取得意向(SA)

「育児・介護休業法の改正に伴い、 自身の勤務先に育休制度が導入された際、

あなたは将来お子さんができたときに育休を取得したいですか(※自身の現在の勤務先の状況に関わらず、 純粋なあなたの意向をお選びください)」という問いでは、

“未来のパパ”全体での育休取得意向は67.7%と約7割にのぼりました。 育休取得意向が高い一方で、 子を1人以上持つパパに対する「あなたは、

お子さんの出産から生後1年までの間に、 出産や育児のために育休や有給休暇を取得しましたか」の問いには、

全体の50.4%が「(育休も有給休暇も)取得していない」と回答しました。 また、 育休制度を利用して休暇を取得した割合に限ると、

取得率は26.4%(全体)と低い結果となりました。

「育休を取得したい」という男性の気持ちと、 実際の育休取得率との間に、 大きなギャップが生じていることが明らかとなりました。

●男性の育休取得が進まない理由第 1 位は「所得減への不安」育休を取得したくない理由(n=62、

MA)

育休を取得したくない理由(n=62、 MA)

育休取得を望んでいない男性への「あなたはなぜ、 育休を取得したくないと思われていますか」の問いでは、 「所得が減ることに不安がある」の回答がトップとなり、

全体の46.8%を占める結果となりました。 次いで「今後のキャリアへの影響」、 「職場に迷惑がかかる」、

「勤務先が育休を取得しづらい雰囲気がある」が多く挙がりました。 育休取得率を高めるためには、 収入面のサポートを含めた育休制度の整備に加え、

さらに職場での業務を引き継ぐ体制づくりや、 育休取得に対しての職場や同僚からの強い勧めが重要と言えます。

<調査概要>

●調査対象者:全国に住む25~39歳の既婚男性(事実婚を含む)計7,345人

●調査日:2022年1月26日~26日

●調査手法:WEBアンケート調査

* 【参考資料3】4月の育児・介護休業法改正後の現状についての企業ヒアリング結果

●育休制度の内容は法律の範囲に留まる場合が多い

4月に育児・介護休業法が施行され、 それをふまえた育休制度の現状について伺うと、 「基本的には法定通り」という回答が最も多く寄せられました。 また、

今回の法改正のメインとなる10月1日の育児・介護休業法の施行に対しては「これから就業規則の変更や規程作りを行う」という回答が複数の企業から寄せられました。

●各社とも育休取得希望の男性社員からは不安な声があがり、 当事者が尻込みをしている様子

「育休を取得すると給料がどのくらい目減りするのかが分からず、 不安なので育休が取れない」という声や「周りの人に迷惑をかけ、

本当に申し訳なかった」といった声を人事部で把握している企業が複数ありました。 各企業は、 男性への制度説明強化や、 管理職へのセミナーを開催するなどし、

制度の社内浸透に向けた施策を実施していますが、 取り組みの充実度や社内からの反応には開きがありました。

どの企業も、 育児・介護休業法改正にそった規程・制度改訂や、 男性の育児参加意識の高まりへの対応を進めていますが、

まだまだ手探りの状況であることがヒアリングから浮き彫りになりました。

<調査概要>

●調査対象:印刷業、 製造業、 ビジュアル制作業を事業内容とする企業計5社

●調査日:2022年4月28日~5月12日

●調査手法:オンラインによる聞き取り調査