ミトコンドリアを選択的に分解するしくみ「マイトファジー」が皮膚の保湿機能に影響していることを発見

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、 社長:釘丸和也)は、

ミトコンドリアを選択的に分解するオートファジー「マイトファジー」が、 皮膚の最も重要な働きの一つである保湿機能に及ぼす影響について研究し、

以下2点を突きとめました。

1. マイトファジー活性が低いと皮膚の保湿因子の合成が減少すること

2. オトギリソウエキスがマイトファジー活性を促進すること

本知見は、 2022年3月25~28日に開催された日本薬学会第142年会にて発表されました。 生体の恒常性を保つマイトファジーと皮膚機能の関係に着目

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを産生する重要な器官ですが、 紫外線などで損傷すると細胞にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。 生体には、

損傷ミトコンドリアを選択的に分解して生体を守る働きが備わっており、 これを「マイトファジー」(補足資料1)と呼びます。 我々は、 マイトファジーが、

皮膚の働きにも何らかの影響を及ぼすのではないかと考えました。

マイトファジー活性低下で保湿因子が減少

皮膚の主な役割は、 外界の乾燥や刺激から生体を守ることです。 そのためには、 皮膚の細胞が保湿因子を産生し、 皮膚自身がうるおっている必要があります。 そこで、

本研究では皮膚の細胞が分泌する保湿因子、 特にヒアルロン酸とセラミドについてマイトファジーの影響を検証することとしました。

表皮細胞と真皮の線維芽細胞においてマイトファジー活性を人為的に低下させたところ、 ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現が低下することを見出しました(図1)。 また、

表皮細胞では、 セラミド合成酵素遺伝子の発現低下も確認されました(補足資料2)。

マイトファジーの活性を低下させると保湿因子を産生する力も下がったことから、 マイトファジー活性の低下が皮膚のうるおいにも悪影響を及ぼす可能性が示されました。

オトギリソウエキスがマイトファジー活性を促進

表皮細胞と真皮の線維芽細胞のマイトファジー活性を促進するエキスを探索した結果、 オトギリソウエキスにその作用を発見しました(図2)。

本知見により、 角層、 表皮、 真皮の保湿機能に対してマイトファジーを介したこれまでにないアプローチを提供できる可能性が生まれました。 また、

本知見は今後ポーラ・オルビスグループから発売される製品・サービスに活用されます。

【補足資料1】 マイトファジーとは

マイトファジーは、 オートファジー(autophagy)の一種です。 ミトコンドリア(mitochondria)に対して選択的に起こることから、

ミトコンドリアの“mito”とオートファジーの“phagy”をつなげて“マイトファジー(mitophagy)”と名づけられました。

損傷したミトコンドリアを膜で取り囲み、 消化酵素によって分解する仕組みです(図3)。

●オートファジーとは:

細胞が持つ分解機構。 不要になったタンパク質や古くなった細胞内の器官を分解し、 新しくタンパク質などを作るための材料を供給します。 マイトファジーなど、

選択的に行われる機構も近年明らかになりつつあります。

【補足資料2】 マイトファジー活性低下によるセラミド産生への影響

セラミドの産生に対してマイトファジー活性が影響を及ぼすか調べました。 セラミドは角層からの水分蒸散を防ぐため表皮細胞が産生する保湿因子です。

培養した表皮細胞において、 マイトファジー活性を人為的に低下させたところ、 セラミド合成酵素の遺伝子発現が低下することが確認されました(図4)。 この結果より、

マイトファジー活性が低下するとセラミド産生力が低下し、 皮膚のうるおいが保たれにくくなってしまうのではないかと考えられます。

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