土屋総研、障害者介護の資格取得プロセスの格差を調査。約5割の府県で「研修が実施されていない」

土屋総研、障害者介護の資格取得プロセスの格差を調査。約5割の府県で「研修が実施されていない」

障害者介護を中心とした福祉の現場から人の「活きる」を考える土屋総合研究所(所長:吉岡

理恵)は、47都道府県に対して、重度訪問介護従業者養成研修の統合課程(以下「統合課程」)と喀痰吸引研修の第三号研修(以下「3号研修」)の実施状況に関する実態調査」を実施しました。

■調査背景

現在の日本では、少子高齢化を背景として2040年には約280万人の介護人材が不足する見込みとなっていますが、重度障害のある方向けの介護サービスである重度訪問介護等の介護人材の不足も続いています。

重度障害者の在宅生活を支える介護士の不足は命にかかわる深刻な問題であり、土屋は重度障害者の在宅生活を支えるサービス「※重度訪問介護」の提供を行ってきました。

2020年の会社設立から現在まで、重度訪問介護の利用を希望する需要に対して供給が追いついておらず、ヘルパーの数が約700人から約1,700人へと2倍以上に増加しても、依然人手不足の状況が続いています。土屋の社内のデータを見ると、重度訪問介護の利用依頼に対して、サービスを提供できるケースは約40%程度であり、残りの60%は人手不足などを理由にお断りせざるを得ない状況です。

その原因の一つとして、重度訪問介護のヘルパー職に就くための資格取得における機会提供に格差があるのではないかと思い、本調査を実施しました。

※重度訪問介護とは

重度の肢体不自由または重度の知的・精神障害があり、常に介護を必要とする障害支援区分が区分4以上の方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、家事など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行い、地域生活を支援するもの。(先天性の脳性まひ等、脳梗塞などの後発の脳血管性障害、事故等による脊髄頸椎損傷や遷延性意識障害、ALSや筋ジストロフィー、パーキンソンなどの神経筋難病疾患、知的障害者の方などが対象)

・障害福祉サービスの詳細について(厚生労働省 )

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

■重度訪問介護のヘルパーとして医療的ケアを提供するまでの主なプロセス

重度障害者の在宅生活を支える重度訪問介護ヘルパーの職に就くためには、主に以下の資格を取得する必要がありますが、2.の重度訪問介護従業者養成研修統合課程以外の資格では医療的ケアを行うことができないため、別途3号研修を修了する必要があります。

1.

重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程+追加課程)

2.

重度訪問介護従業者養成研修統合課程

3.

介護職員初任者研修/居宅介護職員初任者研修

4.

介護福祉実務者研修

5.

介護福祉士

重度訪問介護利用者のうち障害支援区分6の方が全体の約7割以上を占めており、土屋のクライアント全体の約4割が医療的ケアを必要としています。それゆえ、重度訪問介護ヘルパーには、障害支援区分6の方にサービス提供ができ、かつ医療的ケアのできる喀痰吸引等研修の資格を併せ持つことが求められています。

医療的ケアが必要な重度障害者の多くはALSや進行性筋ジストロフィーなど深刻な難病を患っており、そのような方々は目や口も含め体のほとんどを動かせないことが多いです。ヘルパーが利用者とコミュニケーションを取るには、利用者の体のほんのわずかな筋肉の動きを見逃さないことが求められ、それには相当の技量が必要であるため、こうした利用者の介護をできるヘルパーの数は必然的に絞られてきます。

すなわち、重度訪問介護の人手不足はヘルパーの絶対数が少ないことに加え、難病患者に対応できる技量をもつヘルパーが少ないことに起因しています。これが重度訪問介護ヘルパーの慢性的な人手不足の理由のひとつです。

この課題に対して有効な取り組みのひとつが、喀痰吸引等研修第3号研修を含む「重度訪問介護従業者養成研修

統合課程」の受講です。重度訪問介護のヘルパーになるための資格取得にかかる日数が少なく、最短2日で研修修了が可能となっています。

私たち土屋は、重度訪問介護業界の深刻な人手不足に対して「最も早く、最も安く重度訪問介護のヘルパー職に就くことのできる方法」として「統合課程」を位置付けています。実際に「統合課程」修了者を数多く輩出することで、ヘルパーの人数を増やし、サービスを必要とする重度障害者のニーズに応えてきました。

■調査結果の要約

* 1.統合課程の延べ受講人数と、3号研修の延べ受講人数の割合は1:9。

* 2.「統合課程」の開催頻度は、「0回」の府県が最も多く48.8%に。

* 3.3号研修の受講人数割合が多いTOP10位のうち、5府県が統合課程のTOP10にもランクイン。3号研修の受講者が多いエリアでは、統合課程も多く受講されている結果に。

* 4.「統合課程が実施されていない府県」の3号研修の受講人数割合は、平均「5.8人」。「統合課程が実施されている府県」よりも、「12.2人」少ない結果に。

* 5.3号研修が複数の市区町村で開催されている都道府県は76.6%あるが、統合課程は「1ヶ所以下」での開催が最も多く、63.8%。

【土屋ケアカレッジの割合】

* 6.株式会社土屋が運営する研修事業所がある16府県のうち、5割で統合課程のシェアが100%。土屋ケアカレッジがない府県では、受講人数「0人」が86.7%に。

■調査結果の概要

1.統合課程の延べ受講人数と、3号研修の延べ受講人数の割合は1:9。

統合課程の延べ受講人数と、3号研修の延べ受講人数の割合は1:9であることがわかりました。

3号研修は、初任者研修や実務者研修資格を所持しているヘルパーが医療的ケアの必要な利用者を担当することになってから追加で取得するケースが多く、重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程・追加課程)と組み合わせて取得することはあまり想定されていません。現に、重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程・追加課程)が年に2回程度しか開催されない自治体などもあることから、支援を本当に必要としている重度障害者のニーズに速やかに応えているものとはいえません。

2.「統合課程」の開催頻度は、「0回」の府県が最も多く48.8%に。

また、統合課程の開催頻度は、「0回」の府県が最も多く48.8%となりました。一方で、資格の取得機会が「25回以上」ある府県は24.4%あり、地域毎の開催頻度に差がある様子がうかがえます。

3.3号研修の受講人数割合が多いTOP10位のうち、5府県が統合課程のTOP10にもランクイン。3号研修の受講者が多いエリアでは、統合課程も多く受講されている結果に。

3号研修の受講率が高い自治体TOP10の内5府県は、統合課程の受講率が高い自治体TOP10にもランクインしています。3号研修が多く行われているところは、統合課程も比較的多く行われていると言えます。

4.統合課程が実施されていない府県の3号研修の受講人数割合が、平均「5.8人」。統合課程が実施されている府県よりも、「12.2人」少ない結果に。

また、「統合課程が実施されている府県」と「統合課程が実施されていない府県」の3号研修の実施状況を比較したところ、統合課程が実施されている府県では、3号研修の延べ受講人数も多いことが分かりました。

「統合課程が実施されていない府県」の人口10万人あたりの平均延べ受講人数は「5.8人」で「統合課程が実施されている府県」よりも、「12.2人」少ないことが分かりました。

5.3号研修の開催場所(市区町村数)は、「5ヶ所以上」が最も多く34.0%。一方で、統合課程は「1ヶ所以下」が最も多い63.8%に。

研修の開催場所数(市区町村)別の割合は、3号研修においては「5つ以上」の都道府県が最も多い34.0%となり、全体の76.6%が複数の市区町村での開催がある結果となりました。

一方、統合課程においては、「5つ以上」の都道府県が最も少ない2.1%となり、「1つ以下」の都道府県が最も多い63.8%となりました。

【土屋ケアカレッジの割合】

6.土屋ケアカレッジがある16府県のうち、5割で統合課程のシェアが100%。土屋ケアカレッジがない府県では、受講人数「0人」が86.7%に。

統合課程における土屋ケアカレッジの受講人数割合は、土屋ケアカレッジがある16府県のうち、5割となる8県(鳥取県、愛媛県、福岡県、富山県、沖縄県、広島県、岡山県、茨城県)で「100%」のシェアとなりました。また、上記に熊本県、愛知県、岩手県、京都府、宮城県を追加した8割以上の13府県で、シェアが「50%以上」であることがわかりました。

また、「土屋ケアカレッジがない都道府県」と「土屋ケアカレッジがある都道府県」の統合課程の延べ受講人数を比較すると、土屋ケアカレッジがない場合は、「0人」の都道府県が86.7%であることがわかりました。加えて、延べ受講人数が「50人以上」の割合は、土屋ケアカレッジがない場合は4.8%であるのに対して、土屋ケアカレッジがある場合は36.8%となっており、7.7倍の差があることがわかりました。

■総括

* 土屋総合研究所 所長 吉岡 理恵

第三号研修と統合課程における受講者数の比較で、第三号研修の受講者が多く、統合課程が普及していない結果となったのは意外でした。一方で、統合課程の実施がない都道府県では、第三号研修の人口あたりの受講率も低く、医療的ケアを実施できる介護人材の数に地域間の格差があることが明らかになりました。

また、都道府県によっては統合課程に必要な講師要件の厳しさが顕著な場合もあり、例えばあるエリアでは「人権啓発に関する知識」の講義に学識経験者が必要など、研修機関の設置が通常の事業者では難しい状況もあります。

土屋ケアカレッジでは、都心部だけでなく地方地域での研修にも注力していますが、今回の調査では、統合課程において、土屋ケアカレッジしかない地域が6県あったことに誇らしさを感じました。今後も医療的ケアを含めた介護人材の育成に貢献すべく、各自治体の皆様とも協議を進めていきたいと考えています。

* 土屋グループ 顧客創造部 部長 杉 隆司

私は、約3年前に前職で、あるエリアの県庁に統合課程の開設を何度も打診したことがありますが、未だ開設されていません。理由は、重度訪問介護の利用対象者からの、サービス利用の申請が少ないとのことでしたが、実際には利用者がいないのではなく、重度訪問介護を提供する事業所がないため利用者が諦めてしまっている、という状況だと考えられます。これはその県に限ったことではありませんが、重度訪問介護の事業所を開設するためには人材の確保が必要です。しかし、統合課程がヘルパーの居住地で開講されていない場合、ヘルパーに他県で資格を取得してもらわなければなりません。

例えば、特定のエリアに在住のヘルパーは、統合課程の資格研修が開講されている近隣県まで、4時間かけて受講しにいかなければなりませんでした。当時はコロナ禍であったため県をまたいだ移動が行いづらく、約9割の方が資格取得を辞退してしまうこととなり、その状況が2、3年も続いていました。また、別のエリアでは、事業所開設から5年以上経過しなければ研修機関を設置できないという規則があるため、ヘルパーがコロナ禍に関わらず他のエリアまで飛行機で移動して、受講する必要がありました。

地域毎に複雑な課題があるかと思いますが、自治体関係者の方々にはご理解いただき、多くの方が適切な福祉サービスを受けられるよう、統合課程の開設を含め、サポートいただければと思っています。

■調査概要

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調査実施期間:2023年11月14日~11月29日調査対象:47都道府県

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有効回答数:項目によるため詳細は各グラフを参照

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調査方法:電話調査及び各自治体の公式発表データから収集・分析

※調査に関する補足

・すべての都道府県に電話調査を実施いたしましたが、収集が不可能だった都道府県を「無回答」としているため、47都道府県のデータが揃っていない場合があります。

・3号研修と統合課程はそれぞれ別の研修であり、一概に比較できるわけではありませんが、課題の全体像を掴んでいただければ幸いです。

■株式会社土屋の詳細・会社名 :株式会社土屋・所在地 :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F・代表取締役:高浜 敏之・HP :

https://tcy.co.jp/・従業員数 :2431名・設立 :2020年8月・事業内容 :

障害福祉サービス事業及び地域生活支援事業介護保険法に基づく居宅サービス事業講演会及び講習会等の企画・開催及び運営事業、研修事業、訪問看護事業

【本件に関するお問い合わせ先】・PR:TEL:080-2988-0468、MAIL:[email protected]

[MAIL%EF%BC%[email protected]]担当 楠橋

・研究関係者からのお問い合わせ:MAIL:[email protected]

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担当 吉岡

当リリースの詳細について

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000084582.html

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調査結果

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