経済小説の第一人者・高杉良が描く、型破りな〈業界紙記者〉とは。新潮文庫1月新刊の『破天荒』は、痛快なエピソード満載の経済小説。著者の人柄と信条がわかる必読のロングインタビュー付!

高校中退で業界紙「石油化学新聞社」に入社した若者は、またたくまにエース記者になっていきます。誰よりも早く情報を取り、突っ込んだ取材をし、持ち前の度胸と好奇心で、高度成長期の企業トップと互角に渡り合った、〈生意気だがデキる奴〉とは……。著者にしか書けないエピソード満載。他に例を見ない経済小説です。

著者の高杉良氏といえば、言うまでもなく経済小説の第一人者。昭和の高度成長から平成まで、日本経済の盛衰を、記者として作家として見つめ、取材してきました。企業のトップをはじめ、時代に翻弄されるビジネスパーソンたち。「その人間ドラマに興味が尽きなかった」と高杉氏は言います。

製造業をはじめ、金融、外資、IT企業など幅広く日本経済の現場を描いてきた著者は、じつはもともと「石油化学新聞社」の業界紙記者でした。しかも高校中退。そこからいかに「スクープ連発」の記者になっていったのか。本書は前代未聞の型破りな〈業界紙記者〉を描く経済小説です。

「石油化学新聞」初出社の日。社長から「こんな青ちょろい若造に仕事が出来るはずがない。だいたいコクヨの原稿用紙に履歴書を書くなんていう神経はどうなってるんだ」と、激烈な一言をくらった主人公の亮平は、負けじと言い放ちます。

「間もなく二十歳です。ここにいる誰よりも筆力も取材力もあると思っています」

その生意気な言葉どおり、試用期間に書いた記事は元旦に掲載され、その後もエース記者として、日本経済を水面下で動かす記事を連発していきます。誰にも物怖じしない度胸、相手の懐に飛び込む力。その圧倒な取材力には大手経済紙記者も驚愕しましたが、その図々しさも相当なものでした。通産省(現経産省)の取材では、課長席だろうと総括班長席だろうと、空席なら図々しく座り込んで待ったといいます。高杉氏は、巻末のロングインタビューで、「僕は恐怖心より好奇心が強いからね」「もともと知りたがり屋」と語っていますが、ダイナミックに動く日本経済の真ん中を、駆け抜けていく若手記者の姿は、まさに「破天荒」といえるでしょう。

鋭い切り口でリーダーの資質を問い、企業や業界の暗部に肉迫してきた高杉良氏。その痛快なまでの軌跡が、読者に元気と勇気を与えてくれる物語です。

■著者略歴

高杉良(たかすぎ・りょう)

1939(昭和14)年、東京生れ。石油化学専門紙記者、編集長を経て、

76年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得て、綿密な取材に裏打ちされた問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説

日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『王国の崩壊』『金融腐食列島』『不撓不屈』『乱気流』『挑戦

巨大外資』『反乱する管理職』『青年社長』『破戒者たち』『人事の嵐』『第四権力』『小説ヤマト運輸』『めぐみ園の夏』『破天荒』『転職』等がある。

■書誌情報

書名 破天荒(新潮文庫刊)

著者 高杉良

発売日 2023年12月25日、電子書籍も同日配信開始

定価・電子書籍の希望小売価格 737円(税込)

ISBN 978-4-10-130339-0