認知症基本法案に対する緊急提言「認知症観を変革する認知症基本法の成立を」を公表

認知症政策のパラダイムシフトの実現のために、「認知症観の変革」と「共生社会構築」を実現する認知症基本法の早期成立が必要

特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)(事務局:東京都千代田区、

代表理事:黒川清)は、 認知症基本法案に対する緊急提言「認知症観を変革する認知症基本法の成立を」を公表しました。

■緊急提言の背景と趣旨:

2019年に自民党・公明党議員による議員立法として国会に提出された認知症基本法案は、 新型コロナウィルス感染症など様々な状況により、

依然として継続審議の状態である。 2021年には超党派の議員連盟である「共生社会の実現に向けた認知症施策推進議員連盟」が設立され、

改めて認知症基本法案についての検討がされており、 議論の進展が期待されている。 本緊急提言は、 この認知症基本法案の修正のための具体的な議論の実施、

及び2023年次期通常国会における確実な成立を求めるものである。

日本の認知症の人の数は推計値で約600万人を超え、 高齢化率の上昇に伴い、 今後も増加が見込まれている。 また2014年に公表された認知症の社会的コストは、

年間約 14.5 兆円(医療費:1.9 兆円、 介護費:6.4 兆円、 インフォーマルケアコスト:6.2 兆円)と推計されている。 こうした状況からも、

認知症を取り巻く社会的インパクトは認知症の人と家族を中心に非常に大きく、 政策課題としての優先度は非常に高い。

2019年末から流行している新型コロナウィルス感染症の影響により、 認知症の政策的優先度合が一時的に下がっているものの、

本来は超高齢社会である日本においては最優先課題である。 また何より当事者の期待は大きく、

日本認知症本人ワーキンググループや認知症の人と家族の会をはじめとした本人・家族団体も認知症基本法の成立を求めて提言や声明を発表しているほか、

アカデミアや産業界からも同様の声が上がっている。 日本医療政策機構としても、 認知症国会勉強会の共催や各種シンポジウムの開催、 政策提言書の公表など、

認知症基本法の成立に向けてかねてよりアドボカシー活動を行ってきた。

認知症基本法案の提出後、 新型コロナウィルス感染症が流行し、 議論への影響もあったと思われるが、 いよいよ「ポストコロナ」に向けた議論も高まってきている。

改めて従来の最優先課題であった認知症へフォーカスを戻すことが求められる時期に来ている。

日本医療政策機構が2022年7月に公表した政策提言「これからの認知症政策2022

~認知症の人や家族を中心とした国際社会をリードする認知症政策の深化に向けて~」においても言及しているが、

来年2023年はG7が日本で開催されることとなっており、 高齢化最先進国である日本が国際社会においてのリーダーシップを示し、

認知症政策の議論をリードすべきである。 そのためには、 2023年の通常国会会期中の成立が必要であり、 本提言、 認知症の人や家族、 医療・介護関係者、

アカデミアをはじめとしたマルチステークホルダーの意見や最新の議論を踏まえた新たな認知症基本法が速やかに超党派で熟議され、 国会に提出・成立することを求めたい。

■緊急提言の主な内容:

提言1:「共生」を軸とした認知症基本法とすべき * 1-1:国民の責務として「予防」ではなく、 「共生社会構築への参画・協力」の明記を

* 1-2:「早期発見・早期診断・早期対応」と「相談体制の整備」の一体的な明記を

提言2:認知症の本人や家族の主体的参画を促す認知症基本法とすべき * 2-1:「認知症施策推進協議会」(仮称)の設置と当事者委員の参画の明記を

* 2-2:政策形成・実行・評価において「認知症の人や家族等と協働する」ことの明記を

* 2-3:研究開発における「患者市民参画(PPI)」の明記を

提言3:研究開発の推進によるパラダイムシフトを踏まえた認知症基本法とすべき * 3-1:

新たな予防・診断・治療技術の社会実装を見据えた保健医療福祉サービスの均てん化と「早期診断」の明記を

緊急提言の詳細は、 日本医療政策機構のwebサイトをご覧ください

https://hgpi.org/research/dementia-20220927.html

■日本医療政策機構とは:

2004年に設立された非営利、 独立、 超党派の民間の医療政策シンクタンク。 市民主体の医療政策を実現すべく、 中立的なシンクタンクとして、

幅広いステークホルダーを結集し、 社会に政策の選択肢を提供しています。 特定の政党、 団体の立場にとらわれず、 独立性を堅持し、

フェアで健やかな社会を実現するために、 将来を見据えた幅広い観点から、 新しいアイデアや価値観を提供しています。 日本国内だけでなく、

世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、 地球規模の健康・医療課題を解決すべく、 活動しています。

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