メトセラ、最大10億円のAMED委託事業に採択ー心臓内幹細胞を用いた再生医療等製品の開発を加速

小児先天性心疾患患者に対する心臓内幹細胞による再生医療の第3相臨床試験を推進 株式会社メトセラ(本社:神奈川県川崎市、 以下メトセラ)は、

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)のスタートアップ型(ViCLE)」[i]

に採択されましたのでお知らせいたします。

■採択事業の概要

本採択事業は、 JRM-001[ii]の検証的試験(第3相臨床試験)について、 分担機関である国立大学法人岡山大学(本部:岡山県岡山市、

以下岡山大学)との連携を通じて進めることにより、 小児先天性心疾患患者に対する治療法の開発に取り組むものです。 本採択により、 メトセラは最長で5年間、

最大10億円の委託費を受領する可能性があります。

JRM-001は厚生労働省の先駆け審査指定制度[iii]の対象種目であり、

小児の重篤な希少疾患に対し一刻も早い実用化が求められている画期的な治療法として上市を目指しています。 本採択事業を通じてメトセラは、

JRM-001の検証的試験(第3相臨床試験)を推進し、 その有効性と安全性を確認します。

■JRM-001について

対象疾患である単心室症とその課題

単心室症は心臓から血液を送り出す主な心室が1つしかない病態の先天性心疾患であり、 年間310~810名程度が発症する希少疾患です[iv]。

標準治療として外科的修復手術が実施され、 近年では術後生存率は向上しつつあるものの、 90%の患者さんが手術後40歳までに心機能低下や心不全などを発症し、

20年生存率は69%程度と、 長期予後が良くない疾患です[v]。 小児期から外科的修復手術を繰り返し、 成長に伴い日常生活や就業などへ影響を及ぼすため、

患者さんのQOL[vi]を低下させるにもかかわらず心機能の改善を効能とする医薬品、 再生医療等製品は現在までに上市されていません。

治療コンセプト自家細胞移植によるJRM-001の治療フロー

自家細胞移植によるJRM-001の治療フロー

JRM-001は、 心臓内幹細胞(CSC:Cardiac stem cell)を主成分とする希少疾病用再生医療等製品[vii]です。

単心室症の患者さんは標準治療として外科的修復手術を行いますが、 その際に得られる微量の余剰心組織を再生医療等製品の原料とします。 その後、

細胞加工施設へ輸送され、 細胞を培養して製剤化した後、 再び医療機関にてご本人の身体に投与されます(図)。

余剰となったご本人の細胞を使用する自家の再生医療であるため、 追加的な身体への負担や、 免疫拒絶リスクが低いことがJRM-001の特徴です。

開発の経緯

メトセラは、 2022年4月に株式会社日本再生医療(以下日本再生医療)を傘下に収め[viii]、

同社が開発を続けてきた自己由来の心臓内幹細胞を用いた希少疾病用再生医療等製品(JRM-001)について、 引き続き開発を進めてまいりました。

単心室症に対する心臓内幹細胞を用いた治療法については、 岡山大学がヒト幹細胞臨床研究として実施した第1相臨床研究[ix]及び第2相臨床研究[x]において、

その安全性と有効性を示唆する研究成果が報告されています。 本臨床試験の結果を踏まえ、 メトセラはこれまでに検証的試験(第3相臨床試験)を実施してまいりました。

■開発分担者からのコメント

国立大学法人岡山大学 学術研究院医歯薬学域 心臓血管外科学 教授、

心臓血管外科・科長、 小児心臓血管外科・科長、 循環器疾患集中治療部・部長 笠原真悟先生

今回採択された課題は、 単心室症という先天性心疾患に対して、 再生医療による治療法を開発する挑戦です。 単心室症は、

さまざまな手術法の開発により生命予後が改善しました。 しかしながら、 中には単心室症に特有な心臓の筋肉の機能低下が見られることがあり、

重症の心不全となることが大きな問題となっております。 そして、 この重症の心不全によって全身の多臓器の機能不全も連鎖反応として引き起こされます。

岡山大学ではこれまで実施した2回の臨床研究を通じ、 心臓内幹細胞の長期的な効果を確認してきました。 今回の採択によりメトセラとともに検証的試験を完了し、

この革新的な治療を患者のみなさんに1日も早くお届けしたいと考えております。

株式会社メトセラ 事業開発部 バイス・プレジデント、

日本再生医療事業部 JRM-001開発責任者 戸田 光太郎

(株式会社日本再生医療創業メンバー)

日本再生医療を創業した2013年より、 未来を担う子どもたちに新しい治療製品を届けたいという強い使命感の下、 一貫して本技術の実用化に取り組んでまいりました。

足元では、 開発が最終段階に近づくなか、 メトセラとの連携によってさまざまな技術的な課題を短期間に解決することに成功しています。

治療選択肢が限られる単心室症の患者さんにとって、 本技術の実用化は希望につながると強く確信しており、 本事業への採択はその実現に向けた大きな一歩となります。

1日も早く患者さんに本治療技術をお届けできるよう、 会社一丸となり開発を推進してまいります。

■採択事業の概要

1. 研究開発課題名:心臓内幹細胞を用いた小児先天性心疾患患者に対する治療法の開発

2. 研究開発体制

代表機関:株式会社メトセラ、 分担機関:国立大学法人岡山大学

3. 研究開発期間と受託費総額:最長5年間、 最大10億円

4. 参考情報:

https://www.amed.go.jp/koubo/17/01/1701C_00002.html

■メトセラについて

メトセラは、 既存治療による効果が不十分な慢性疾患に対して、 線維芽細胞および幹細胞を用いた新たな治療法を提供するべく、

2016年に創業した臨床開発ステージのスタートアップです。 創薬研究、 プロセス開発、 投与法の最適化を一体的に実施することにより、

革新的な治療法を提供することを目指しています。 主要パイプラインとして、

自家心臓由来線維芽細胞と投与用カテーテルを組み合わせた心不全向け再生医療等製品(MTC001)の第1相医師主導治験を開始しました。 さらに、

先駆け審査指定制度認定・希少疾病用再生医療等製品指定を受けた、

自家心臓内幹細胞を用いた小児先天性心疾患向け再生医療等製品(JRM-001)の第3相臨床試験を実施しています。

会社名:株式会社メトセラ

代表取締役:岩宮 貴紘、 野上 健一

本社所在地:神奈川県川崎市川崎区殿町三丁目25番22号 ライフイノベーションセンター

設立:2016年

ウェブサイト:

https://www.metcela.com/

■補足説明

[i] 「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」は産学官の連携を通じて革新的な医薬品・医療機器等の創出に向けた支援を行い、

実用化の加速化を目指すAMEDの事業。 そのなかでもベンチャー企業の支援を目的とするものを「スタートアップ型(ViCLE)」という

[ii]メトセラが開発を進める再生医療等製品。 根治療法が存在しない小児の希少疾患である単心室症の患者さんに対して投与することにより、

心機能改善を通じた長期予後の改善を目指す

[iii] 革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品を日本で早期に実用化すべく、 世界に先駆けて開発され早期の治療段階で著明な有効性が見込まれる医薬品等を指定し、

各種支援による早期の実用化を目指す制度

[iv] 難病情報センター「病気の解説」(

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4369)より当社推計

[v] 難病情報センター「概要・診断基準等」(

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4370

[vi] Quality of life:生活の質を意味する概念

[vii] 医薬品医療機器法第77条の2に基づき、 国内対象患者数が5万人未満であり、 医療上特にその必要性が高いものなどの条件に合致するものとして、

薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定するもの

[viii] 関連プレスリリース:

https://www.metcela.com/2022/04/04/acquisition_j/

[ix] Ishigami et al. Circ Res. 2015 Feb 13;116(4):653-664

[x] Ishigami et al. Circ Res. 2017 Mar 31;120(7):1162-1173、 Sano et al. Circ

Res. 2018 Mar 30;122(7):994-1005