第15回日経小説大賞 山本貴之氏の「紅珊瑚の島に浜茄子が咲く」に

第15回日経小説大賞(日本経済新聞社・日経BP共催)の受賞作が決まり、山本貴之氏(64)の「紅珊瑚の島に浜茄子が咲く」が受賞しました。江戸時代後期、北前船が行き交う日本海に浮かぶ天領の島を舞台に、禁制を犯す藩と幕府との駆け引きを、江戸から跡継ぎに送り込まれた若き藩主を主人公に描く歴史ミステリーで、男女の恋愛も絡めた巧みな構成が評価されました。

授賞式は2024年3月1日、東京都千代田区の日本経済新聞東京本社にて行います。受賞作は24年3月に日本経済新聞出版から単行本として出版します。

なお、日経小説大賞は今回で公募を終了します。作品の応募やイベント参加など、これまでのご愛顧ありがとうございました。

1.選考委員辻原登、高樹のぶ子、角田光代の3氏

2.賞金500万円

3.第15回受賞者

山本貴之(やまもと・たかゆき)氏=写真

1959年静岡県生まれ。東京大法卒、ジョージタウン大学法学修士。銀行勤務の後、コンサルティング会社を経て、現在は空港運営に携わる。著書にエネルギーや金融ビジネスを扱った小説「M&A神アドバイザーズ」「金融再生請負人」がある。北海道在住。

4,受賞作の内容

「紅珊瑚(べにさんご)の島に浜茄子(はまなす)が咲く」

時は文化文政の世。遠州浜名藩主の四男、部屋住みの響四郎と町方の女房との根津権現での出会いから物語は始まる。互いに名も身分も明かさずひとつになり別れた。響四郎は羽州新田藩に継嗣として迎えられることになっていた。外様とはいえ大藩である羽州藩支藩への異例の末期養子は、幕閣の出世頭である浜松藩主・水野忠邦の斡旋によるものだった。新田藩が預かる天領の島では、蝦夷地の花として知られる浜茄子が咲く。響四郎に白羽の矢が立ったのは、その秘密を探らせるためでもあった。

響四郎に江戸から付き従ってきた浜名藩士が、次々と島で不審の死を遂げる。沖合で見られる怪異現象がささやかれ、忍びや隠密が暗躍する島で何が起こっているのか。その真相が明らかになったとき、そして一度限りの情事で刻まれた恋の行方は……。

5.応募状況23年4月から6月にかけて募集。応募作品数は167点

《過去の受賞作》

第1回(2006年10月) 武谷 牧子氏 「テムズのあぶく」

第2回(2008年10月) 萩 耿介氏 「松林図屏風」

第3回(2011年10月) 梶村 啓二氏 「野いばら」

第4回(2012年12月) 長野 慶太氏 「神様と取り引き」(出版時は「神隠し」)

第5回(2013年12月) 芦崎 笙氏「スコールの夜」

第6回(2014年12月) 紺野 仲右ヱ門氏「女たちの審判」

第7回(2015年12月) 西山 ガラシャ氏「公方様のお通り抜け」

第8回(2016年12月) 太田 俊明氏「姥捨て山繁盛記」

第9回(2017年12月) 赤神 諒氏「義と愛と」(出版時は「大友二階崩れ」)

第10回(2018年12月)佐伯 琴子氏「狂歌」

第11回(2019年12月)夏山 かほる氏「新・紫式部日記」

第11回(2019年12月)湊 ナオ氏「東京普請日和」

第12回(2020年12月)天津 佳之氏「利生の人 尊氏と正成」

第13回(2021年12月)夜弦 雅也氏「高望の大刀」

第14回(2022年12月)中上 竜志氏「散り花」

※年月は発表時点、第11回は2作同時受賞。