再生医療の加速へ メトセラと名古屋大学が協同研究体制を構築

線維芽細胞を用いた循環器・呼吸器疾患領域の創薬パイプラインの開発で講座設置

株式会社メトセラ(本社:神奈川県川崎市、以下「メトセラ」)および国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(所在地:愛知県名古屋市、以下「名古屋大学」)は、2023年9月より大学院医学系研究科に産学協同研究講座(以下「本講座」)を設置したことをお知らせいたします。この講座は、慢性臓器疾患への治療応用拡大が期待される線維芽細胞の包括的な研究開発体制を構築するもので、循環器・呼吸器疾患領域における新たなパイプラインの臨床応用を目指しています。

■ 名古屋大学の産学協同研究講座について

名古屋大学は、産学官の連携推進プログラムとして“産学協同研究講座”の制度を整備し共同研究を推進しています。このプログラムは企業等から経費と人材を受け入れ、名古屋大学の教育研究の進展及び充実と社会貢献を図ることを目的としています。本講座には、メトセラから出向した研究者が名古屋大学の特任教員として常駐し、名古屋大学の充実した研究施設・設備、経験豊富な人材・知見を活用しつつ、産学官連携の共同研究を実施します。医療コミュニティの中で講義や実習を提供し合うことにより、双方の専門知識・ノウハウを生かした創薬パイプラインの開発を実現することができます。

■講座設置の狙い:線維芽細胞の治療応用拡大

メトセラは、人のからだに存在する“線維芽細胞”の中でも、とくに優れた抗線維化能やリンパ管新生能をもつ集団を特定し、大量培養することに成功したベンチャー企業です。本技術を応用したパイプラインとして、虚血性慢性心不全に対する第1相医師主導治験が既に開始されています。

メトセラは本講座の設置を通じ、より高い治療効果が期待される線維芽細胞集団に関する基礎研究体制を大幅に強化します。また、名古屋大学への基礎研究者の出向により人材やノウハウの交流を深め、創薬パイプラインの開発を担う中核人材の育成や、研究開発活動による成長基盤の構築にも取り組みます。

本講座においてメトセラと名古屋大学が実施する共同研究においては、線維芽細胞の慢性臓器疾患に対する治療応用拡大に向けて、作用機序の解明を推し進めるとともに、循環器・呼吸器領域における適応症の拡大を目指します。また、内部・外部からの特任教員の追加登用も積極的に推進していく方針です。

■これまでの開発経緯

メトセラと名古屋大学(循環器内科・室原豊明教授)は過去2年間に渡って共同研究を実施し、動物試験を通じた特定の線維芽細胞の治療効果の検証(新たな適応症の検討)とともに、この線維芽細胞が心臓疾患にどのように治療効果をもたらすのか(作用機序の特定)の研究を共同で実施してまいりました。

さらにメトセラは自社の研究を通じて、肺の線維症を含む慢性呼吸器疾患に対して、特定の線維芽細胞集団が治療効果を有する可能性を見出しています。

■参画者からのコメント

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 室原 豊明

“日本においてはおよそ120万人もの患者さんが、心不全の症状に苦しんでいると言われています。重症の末期心不全の場合には、治療としては左心室補助循環装置の植え込みや心臓移植のみが選択肢となりますが、日本国内では臓器移植の実績は限られているのが現状です。メトセラは心臓の線維芽細胞に着目し、心不全の機能を改善する特定の線維芽細胞集団を発見しました。この技術が実現し心不全に苦しむ患者さんを救う画期的な再生医療となることに期待しています。“

メトセラ 研究開発部 マネージャー

兼 名古屋大学大学院医学系研究科 特任講師 Sebastian Sjoeqvist

“名古屋大学とメセラの画期的な本連携は、心血管系および呼吸器系疾患における創薬の加速に向けた重要な一歩です。これにより基礎研究および臨床試験が飛躍的に前進することが期待され、本連携に参画できることに大きな使命感を感じております。企業のもつ事業観点および製品開発力と、アカデミアと臨床の卓越した専門性を融合させることで、現在満たされていない臨床ニーズに対する先駆的な治療法が生み出されるものと確信しています。“

なお、本協同研究講座の設置計画は経済産業省の「令和4年度

高等教育機関における共同講座創造支援事業費補助金」に採択されております。この補助金は大学等の高等教育機関において、高度人材を育成するために講座等を設置し運営する事業に対して、その費用の一部を補助し人材のリスキリングや、学生の輩出を実現し、産業界のニーズに即した人材の育成の加速化を図るものです。今回の名古屋大学との共同研究を通じて本講座の設置によりメトセラは、従業員の創薬パイプライン開発における研究スキルの向上と新たなキャリアのステップアップの機会を提供します。

■ 補足情報

産学協同研究講座の概要

1. 講座名 再生医療人材育成共同研究講座

2. 契約開始日 2023年9月1日

3. 設置場所 名古屋大学大学院医学系研究科、基礎研究棟内

4. 参考情報

https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/sanren/industry-joint/lecture

5. 共同研究先 循環器内科 室原 豊明 教授、清水 優樹 助教

呼吸器内科 阪本 考司 病院講師

※共同研究は一部予定を含みます

「高等教育機関における共同講座創造支援事業費補助金」の概要

1. 採択内容 再生医療人材育成共同研究講座

2. 事業期間 令和4年度

3. 参考情報

https://jissui.or.jp/project/project013/

■メトセラについて

メトセラは、既存治療による効果が不十分な慢性疾患に対して、線維芽細胞および幹細胞を用いた新たな治療法を提供するべく、2016年に創業した臨床開発ステージのスタートアップです。創薬研究、プロセス開発、投与法の最適化を一体的に実施することにより、革新的な治療法を提供することを目指しています。主要パイプラインとして、自家心臓由来線維芽細胞と投与用カテーテルを組み合わせた心不全向け再生医療等製品(MTC001)の第1相医師主導治験を開始しました。さらに、先駆け審査指定制度認定・希少疾病用再生医療等製品指定を受けた、自家心臓内幹細胞を用いた小児先天性心疾患向け再生医療等製品(JRM-001)の第3相臨床試験を実施しています。

会社名:株式会社メトセラ

代表取締役:岩宮 貴紘、野上 健一

本社所在地:神奈川県川崎市川崎区殿町三丁目25番16号サイバニクス医療イノベーションベースA棟

設立:2016年

ウェブサイト:

https://www.metcela.com/

■名古屋大学大学院医学系研究科について

名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科はその源を尾張藩校に発し、150年の歴史と約13,000人の卒業生を誇る日本でも最古の医学部のひとつです。歴史を継承しながら発展を続け、新しい医学と医療の創出を理念の一つとし、世界屈指の研究大学を目指しています。

名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科

ウェブサイト:

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/

■問い合わせ先

東海国立大学機構 名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 メディカルイノベーション推進室

[email protected]

株式会社メトセラ 広報担当

[email protected]